こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。
相続税の納付方法は、原則として金銭一時納付になります。しかし、相続財産に必ずしも金銭があるとは限らないもの。
そこで、一定の条件を満たす場合に限り、不動産等の物で納付する物納の制度が設けられています。
不動産等を譲渡すると、譲渡所得が発生しますが、物納の場合は相続税部分まで譲渡所得が課税されません。
物納では譲渡所得がなく、相続税納付のための売却では譲渡所得が課税される。
実質的に同じに見えるこの論点について争った事例を紹介します。
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
Contents
相続税の物納と相続税の取得費加算
相続税の物納は所得税の譲渡所得が非課税
相続税を納めるために物納した場合、所得税の譲渡所得が非課税となります。
本来であれば、譲渡をすれば譲渡所得が課税されますが、そこが非課税に。
しかし、物納ではないが、相続税納付のための譲渡の場合課税が行われます。
実質的に同じに見えるこの論点について、非課税にするべきと争った裁決事例を紹介します。
物納の期間も長く相続税の取得費加算が出来なかった
また、物納は決定までに長期間を要することが多くあります。
相続税の取得費加算の適用は、相続開始があった日の翌日から3年10ヶ月以内の譲渡が必要となるため、この条件を満たすことが出来ない可能性もあります。
これについても同時に争った裁決事例を紹介します。
相続税納付の為に売却した譲渡所得が非課税か否かで争った裁決事例
出典:国税不服審判所ホームページ(平成8年12月12日裁決・争点番号202714000)
なお、裁決事例集には登載されておりません。
平成8年12月12日裁決・物納申請後、申請を取下して相続税納付のために当該不動産を売却した場合に非課税になるか否かで争った裁決事例
請求人(納税者側)の主張
相続税の取得費加算の適用を受けるため、その適用期限までに売却が出来なかったのは原処分庁の物納申請に対する判断が、換価可能であるか否かについて何ら検討せずに維持管理の不都合のみを理由になされたものである。
また、その判断が取得費加算の適用期限を従過して行われた。
更に、土地建物の譲渡が所得税法上の課税取引であるとしても、相続税納付のために譲渡した土地建物を一義的に課税取引の対象としたのは不当である。
よって、相続税の取得費加算の適用又はそれに準ずる軽減措置を受けることが出来るはず。
原処分庁(税務署側)の主張
請求人は、物納取下書を提出している。また、原処分庁が物納申請を却下した事実はない。
また、相続税納付のために行った資産の譲渡を非課税とする法令上の規定もない。
更に、相続開始があった日の翌日から相続税申告書の提出期限2年(当時は2年だったのでしょうか?)を経過する日までであればいつでも売却をして取得費加算を受ける権利があった。
よって、請求人の主張には理由がない
結論
棄却(所得税の譲渡所得は課税され、相続税の取得費加算の適用もない。)
本裁決事例のポイント
法令上の規定をしっかり参照する
今回の論点としては、物納の期間が長いために相続税の取得費加算の適用期限を受けることが出来なかったこと、相続税納付のための譲渡を一義的に課税するかの是非でした。
相続税の取得費加算は、そもそも売却する権利は有していた訳なので、考慮する必要はない。
また、相続税納付ための譲渡を非課税にする規定もない。
上記の理由などから、請求人の主張は棄却されました。
物納では非課税になるのですが、相続税納付のための譲渡は非課税になりません。
実質は同じに感じますが、やはりそこは租税法律主義。法律を遵守しなければいけません。
根拠法律はしっかり参照するようにしましょう。
まとめ
・根拠の法律はしっかり参照する
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
このページの執筆者
立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。