さて、今年数十年ぶりに配偶者に関する相続税法の民法が改正される宣言がされたことは記憶に新しいですね。
配偶者関連では相続税法上かなーり優遇されていたり、配偶者のどちらかが専業だったりした場合、一方が稼いだお金は稼いだ人の財産なのか夫婦の共有財産として扱われるのかなど、配偶者の存在は相続において大きなポイントになります。
そんな訳で今回は相続税法でめっちゃ優遇されている配偶者に対する規定・配偶者に対する相続税額の軽減の規定について紹介しましょう!
ちなみに私は業界はいりたての頃はそもそも配偶者ってなんですかとか思ってました。配偶ってなんだよ! 配偶の人ってどんな人だよ! という感じでしたが、配偶者という言葉は一般的にも使われているのでしょうか。
あ、ちなみに配偶者というのは簡単に言うと法的に婚姻してる夫、妻のことですね。
こうしてみると一見当たり前のように使っている言葉でも法律用語だったりしますね! やはりこれからは当たり前に使っている言葉に対して疑問を持ち、本当に伝わるのかをしっかり吟味しなければいけません。
そう、私はそれを警鐘するために自らを犠牲にしたのです! 勇気ある無知!!
目次
1.配偶者が取得した財産については相続税は発生しない?
2.でも申告は必要
3.米国との比較
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(配偶者に対する相続税額の軽減)
電子政府の総合窓口 イーガブより引用
第十九条の二 被相続人の配偶者が当該被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、当該配偶者については、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した残額があるときは、当該残額をもつてその納付すべき相続税額とし、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額以下であるときは、その納付すべき相続税額は、ないものとする。
一 当該配偶者につき第十五条から第十七条まで及び前条の規定により算出した金額
二 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の総額に、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額が当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額
イ 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額に民法第九百条(法定相続分)の規定による当該配偶者の相続分(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続分)を乗じて算出した金額(当該被相続人の相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)が当該配偶者のみである場合には、当該合計額)に相当する金額(当該金額が一億六千万円に満たない場合には、一億六千万円)
ロ 当該相続又は遺贈により財産を取得した配偶者に係る相続税の課税価格に相当する金額
2 前項の相続又は遺贈に係る第二十七条の規定による申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに、当該相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていない場合における前項の規定の適用については、その分割されていない財産は、同項第二号ロの課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれないものとする。ただし、その分割されていない財産が申告期限から三年以内(当該期間が経過するまでの間に当該財産が分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該財産の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から四月以内)に分割された場合には、その分割された財産については、この限りでない。
3 第一項の規定は、第二十七条の規定による申告書(当該申告書に係る期限後申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書を含む。第五項において同じ。)又は国税通則法第二十三条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に、第一項の規定の適用を受ける旨及び同項各号に掲げる金額の計算に関する明細の記載をした書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
4 税務署長は、前項の財務省令で定める書類の添付がない同項の申告書又は更正請求書の提出があつた場合においても、その添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該書類の提出があつた場合に限り、第一項の規定を適用することができる。
5 第一項の相続又は遺贈により財産を取得した者が、隠蔽仮装行為に基づき、第二十七条の規定による申告書を提出しており、又はこれを提出していなかつた場合において、当該相続又は遺贈に係る相続税についての調査があつたことにより当該相続税について更正又は決定があるべきことを予知して期限後申告書又は修正申告書を提出するときは、当該期限後申告書又は修正申告書に係る相続税額に係る同項の規定の適用については、同項第二号中「相続税の総額」とあるのは「相続税の総額で当該相続に係る被相続人の配偶者が行つた第六項に規定する隠蔽仮装行為による事実に基づく金額に相当する金額を当該財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格に含まないものとして計算したもの」と、「課税価格の合計額のうち」とあるのは「課税価格の合計額から当該相当する金額を控除した残額のうち」と、同号イ中「課税価格の合計額」とあるのは「課税価格の合計額から第六項に規定する隠蔽仮装行為による事実に基づく金額に相当する金額(当該配偶者に係る相続税の課税価格に算入すべきものに限る。)を控除した残額」と、同号ロ中「課税価格」とあるのは「課税価格から第六項に規定する隠蔽仮装行為による事実に基づく金額に相当する金額(当該配偶者に係る相続税の課税価格に算入すべきものに限る。)を控除した残額」とする。
6 前項の「隠蔽仮装行為」とは、相続又は遺贈により財産を取得した者が行う行為で当該財産を取得した者に係る相続税の課税価格の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装することをいう。
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000073_20180401_430AC0000000007&openerCode=1#186
1.配偶者が取得した財産については相続税は発生しない?
さて、配偶者に対する相続税額の軽減の規定ですが、上記の条文を見ると色々書いてあってどこを読めばよいのかよく分かりませんね。
一番知りたいところである、「配偶者が取得した財産についてはどれだけ相続税が軽減されるの」という点ですが、最初の段落と2の段落でまとまっています。
どれだけ軽減されるかは以下の式で求められますね。
≪算式≫
相続税の総額×①と②のうちいずれか小さい金額/被相続人に係る課税価格の合計額
①配偶者が取得した財産の課税価格の合計額
②1億6,000万円と被相続人に係る課税価格の合計額に法定相続分を乗じた金額のいずれか大きい金額
上記の算式で計算された金額が配偶者に係る税額以下(贈与税額控除後)の場合、納付相続税はなしになります。
簡単ですよね!
こんなの一瞬で理解できるわけありません。
算式とか出すとややこしくなるので、簡単に紹介すると以下の感じになります。
⑴配偶者と亡くなった方との間に子供がいる場合
①亡くなった方の遺産総額が1億6,000万円以下の場合→配偶者がどんなに取得しても配偶者の納付税額は0
②亡くなった方の遺産総額が3億2,000万円以下の場合→1億6,000万円までは財産を取得しても相続税は0。それ以上取得すると超えた分だけ発生。
③亡くなった方の遺産総額が3億2,000万以上の場合→遺産の1/2までは取得しても相続税は0。それ以上取得すると超えた分だけ発生。
⑵配偶者と亡くなった方との間に子供がおらず、亡くなった方の両親・兄弟等がいない場合
配偶者が取得した財産全てに対して相続税は0。
上記の他に、子供がおらず亡くなった方の両親が存命の場合や兄弟がいる場合についてはまた少し変わってきます。上記⑴の相続税が発生しないラインがそれぞれ上がっていきます。ただ、あんまり細々と話してしまうと混乱してしまうので今回は割愛します。
本当にざっくり言うと、1億6,000万円までは相続しても相続税は発生しない、ってことですね。
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2.でも申告書の提出は必要
じゃあ配偶者が財産全部取得すれば相続税額が0になるから申告も必要ないのかーと思いきや、そこは相続税法。
この規定は基本的に相続税の申告書を提出しないと受けられないんですね。
上記の条文で言うなら、段落三のところになります。申告書提出してねーとか書いてあります。
亡くなった日から10か月後の提出でも受けられることは受けられますが、税務調査とか入って、隠してたでしょーとか言われると受けられなくなる可能性が出てきます。
ですので、基本的には亡くなった日から10か月以内に申告書を提出するのがおススメですね。納税額もグッと下がりますし。
他にも、配偶者が取得するって相続人全員の同意がされた財産、いわゆる遺産分割が終わってない財産についても上記の規定の適用は受けられません。
その場合は、未分割だけど3年以内に分割するよー紙を提出し、一旦相続税を支払って、後から返してもらう形になります。
一時的とはいえ相続税を払うことになるので、やっぱり亡くなった日から10か月以内に分割を終わらせて申告書を提出するのが吉ですね。
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3.米国との比較
それでは最後におまけとして、米国との比較をしましょう。
米国でも配偶者控除はあります。(marrid なんとかと言った覚え)とはいえジャパンも結構手厚く規定されてるので、米国ではどれだけなのか気になるでしょう。
米国では夫婦の財産は共同財産という考え方の元、配偶者が取得した全ての財産に対して相続税は発生しません。
全てです。全て。All of estate
この思い切りの良さ、結構好きです。