相続税

相続税法第19条・生前贈与加算、贈与税額控除

改めて相続税について確認すると相続税は亡くなった時において亡くなった人が所有していた財産について課される税金です。

ならば「じゃあ亡くなる寸前にあげちゃえば財産少なくなるから相続税かからなくなるじゃん!!」と考えられます。

確かに亡くなった時に持ってる財産について課される訳ですから、亡くなる寸前に誰かにあげちゃえば相続税は発生しない!! あ、頭いいなーって思うじゃないですか!!

ダメなんです。

目次

  1. 相続税法第19条・生前贈与加算
  2. 贈与した財産にも相続税
  3. そもそも贈与した方が税負担が高くなる?

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1.相続税法第19条・生前贈与加算、贈与税額控除

第十九条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前三年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産(第二十一条の二第一項から第三項まで、第二十一条の三及び第二十一条の四の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるもの(特定贈与財産を除く。)に限る。以下この条及び第五十一条第二項において同じ。)の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし、第十五条から前条までの規定を適用して算出した金額(当該贈与により取得した財産の取得につき課せられた贈与税があるときは、当該金額から当該財産に係る贈与税の税額(第二十一条の八の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)として政令の定めるところにより計算した金額を控除した金額)をもつて、その納付すべき相続税額とする。

電子政府の総合窓口 イーガブより引用
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000073

上記の条文は2つの構成から成り立っていて、ざっくりと解説すると以下のようになります。

1.相続開始前3年以内に亡くなった人から財産を贈与されてた場合、その贈与時の財産の価額も相続税の計算上、遺産総額に加算するよ。(贈与時の財産を遺産総額に加算した金額を遺産総額とみなすよ)

2.もし、相続税の計算上加算された贈与財産に対して贈与税が課されていた場合、その贈与税は今回納付する相続税から控除できるよ。

の2つですね。前者を生前贈与、後者を贈与税額控除とか呼んだりもしますが、同じ条文に入っていたんですね。

私も知りませんでした。勉強になります!!

悪代官のイラスト

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2.生前贈与加算

さて、先程ざっくりと解説しましたが、まずは生前贈与加算から解説していきます。

と言っても、亡くなった日から3年以内に亡くなった人からもらった財産は相続税の計算に含めるという一文だけでだいぶ完結してますので、これ以上解説することもあまりないのでどうしようかと思っていますが!!

とりあえず最も注意しなければいけない点は、贈与された財産を課税するということですので、贈与税の基礎控除額は全然考慮されないということでしょうか。

贈与税には年間110万円の基礎控除額があり、贈与される人サイドで年間110万円までなら贈与税はかかりませんし、贈与税の申告書を提出する必要もありません。

巷でよく言われてる、相続税対策に毎年110万円ずつ贈与していこう! というのはこういう規定からですね。

しかし、これは相続税。贈与税の基礎控除額なんて関係ありません。

年間110万円以下だろうと申告書を提出していなかろうと、亡くなった日から3年以内に贈与された財産については相続税の計算上含めなければいけません。

つまり、相続税対策に毎年110万円ずつ贈与していこう! の効果が発揮されるのは実質3年後からになります。

相続税対策は1日にしてならず、石の上にも3年の気持ちでやっていかなければならないものであることが伺えます。

ちなみに贈与税にも「扶養している人に対する生活費や教育費」と言った一部の贈与については非課税とされていますが、これについては相続税の計算上含める必要がありません。

非課税は元々、課税する必要がないものとして目的をもって規定されているものですので、相続税の計算上でも含まりません。複雑ですね。

とはいえ、贈与税の非課税について身近なものは先程あげた例ぐらいですので、基本的には相続税に含まれると考えていただいた方が無難です。

また、相続時精算課税制度とかもありますが、それについてはめちゃくちゃ長くなってしまうのでまたいずれ。

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3.贈与税額控除

さて、次に贈与税額控除です。こちらも表面上は案外単純な内容になっています。

先程、2で上げた通り贈与した財産についても相続税の計算上含めなければいけないということになりましたね。

そんなことしたら贈与税払ってたら贈与税と相続税でダブルパンチくらっちゃうじゃん!!

となってしまいますが、そこは税法の世界。

二重課税に対しては結構厳しめな世界観をしていますので、それをこの贈与税額控除で防ぐという訳です!

相続税に加算された贈与財産について贈与税を過年度に払っていたら、今回払う相続税から控除することが出来ます! イメージとしては、前払いしてたみたいなイメージでしょうか。

但し、これで相続税額がマイナスになっても還付は受けられないので注意です。払うか払わないかで、払った贈与税が戻ってくることはありません。

これも相続時精算課税制度を適用しているとまた変わってくるのですが、また別で!

癒着のイラスト

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4.贈与した方が税負担は高くなる?

上記の通り、亡くなる3年以内なら財産を贈与してもしなくても相続税的にはそんなに変わらないことが分かりました。

贈与した財産が相続税の計算に大きくかかわってくる注意点としては以下の2つでしょうか。

①亡くなった日から3年より前にもらった財産については相続税の計算に含めない。

②支払った贈与税額が相続税を上回ると還付は受けられない。

上記2点の注意点として相続税の計算に含まれないことを見込んで一度にたくさん贈与すると多額の贈与税が発生し、逆にトータルの税負担が高くなってしまうことです。例としては以下の通り(相続人は1人としています)

例・財産5000万円ある場合

→全て相続財産になった場合の相続税額は約160万円

→相続税が発生しない基礎控除額まで贈与した場合の贈与税額は約326万円

このように、相続税が発生しないことだけ考えて多額の贈与をすると、本来支払うべき相続税額の2倍もの贈与税を支払うことになります。本末転倒ですね。

また、相続税が発生するライン中での贈与であっても上記のように贈与税が相続税を大きく上回る場合、還付が受けられません。

現実的には、生前でたくさん財産をもらったから相続時にはほとんど遺産をもらわず他の相続人がたくさんもらった場合が該当します。この場合、相続財産は発生しませんが、支払った贈与税は戻らないため税負担が通常より重くなるケースがあります。

相続税対策は1日してならず! というものですので、桃栗三年柿八年、石の上にも三年といったように三年計画でやっていきましょう!