相続税

相続税法第55条・未分割関連

食べ物のピザってあるじゃないですか、あの丸いやつ。

あれって丸を切って食べる訳ですが、複数人で食べると誰がどのピザを食べるかでもめることがあります。

例えばトマトがのってるところがいいとか、カリカリがでかいところがいいとか。

一見、そんな小さいことで、と思うかもしれませんが、こういった未分割の積み重ねが……未分割?

という訳で今回は未分割に関する規定を紹介しましょう!! 

一見ピザの話をしていて全然関係ないようにみえて、これはミクロとマクロな点で話しているだけで合って実は全く同じことを

目次

1.未分割遺産に対する課税

2.配偶者に対する税額軽減

3.小規模宅地等の減額特例

4.その後適用を受けるためには

ジグソーパズルのイラスト

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(未分割遺産に対する課税)
第五十五条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第三十二条第一項に規定する更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない。

電子政府の総合窓口イーガブより引用  https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000073#188

 さて、相続税法第55条に規定されているのが未分割遺産に対する課税です。

 内容としてはその名の通り、亡くなった方の財産を誰がどれを取得するかが決まっていない場合に概算的に各相続人の取得金額を算出し、相続税を計算するというものです。

 人が亡くなるというのは一大事なことと不慮で予想にしていないことということもあり、諸手続きや経営会社の対応等をしていると、申告期限である10か月までに財産を誰がどう取得するか決めるのが間に合わないことがないわけではありません。

そもそも、相続って一生に回数もないので分割ってなんですかみたいな感じも少なくないです。

口頭分割じゃダメなの、的意見も多数あります。ダメです。

  相続税は、各相続人の取得割合に応じて相続税の総額を振り分けるという方式のため、未分割でも相続税の総額は出すことが出来ても、各相続人がそれぞれ納めるべき相続税を算出することは出来ない訳です。

 そこで、一時的に法律で決められた取得割合に応じて取得したものとして相続税を計算していいという規定があるんですね。

 法律で決められた取得割合というのは民法で決められた相続分で、ざっくりいうと他の相続人の続柄に応じて配偶者が1/2,2/3,3/4の割合となり、残りを基本的に均等に残りの相続人で割ることになります。

 この取得割合について説明するとロングタイムになってしまうので、今回は未分割だと一時的に受けられなくなる優遇規定に焦点を当てて解説しましょう。

パズルが組み合わさらない人たちのイラスト(ビジネス)

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2.配偶者に対する相続税額の軽減

 第十九条の二 被相続人の配偶者が当該被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、当該配偶者については、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した残額があるときは、当該残額をもつてその納付すべき相続税額とし、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額以下であるときは、その納付すべき相続税額は、ないものとする。

 2 前項の相続又は遺贈に係る第二十七条の規定による申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに、当該相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていない場合における前項の規定の適用については、その分割されていない財産は、同項第二号ロの課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれないものとする。ただし、その分割されていない財産が申告期限から三年以内(当該期間が経過するまでの間に当該財産が分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該財産の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から四月以内)に分割された場合には、その分割された財産については、この限りでない。

 さて、まずは相続税法の中でもトップクラスの優遇規定の配偶者に対する相続税額の軽減です。

 以前もここのブログで紹介しましたね。軽く説明すると、配偶者は最低でも1億6,000万円までは取得しても相続税が発生しないというものです。

 しかし、この規定は未分割の財産については実は受けることが出来ません。

 具体例として、財産額が1億6,000万円で、配偶者子1人の場合で考えてみましょう。

  ①相続税の総額→約2,000万円

  ②分割がすんで全て配偶者が取得する場合の相続税額→0円

  ③分割がすんでいない場合の仮の相続税額→2,000万円

100か0かみたいな感じで極端に見えますが、全部配偶者取得の場合実際極端です。

 実は、その後に分割がすんで改めて申告すれば過払い分は戻ってきますが、一時的にでも多額の相続税の支払いを行うことになるのは大きな負担となります。

 配偶者の方の生活保護等もありますし、配偶者の方がいる場合には期限内に申告をすませたいですね。

猫のカップルのイラスト

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3.小規模宅地等の減額特例

4 第一項の規定は、同項の相続又は遺贈に係る相続税法第二十七条の規定による申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに共同相続人又は包括受遺者によつて分割されていない特例対象宅地等については、適用しない。ただし、その分割されていない特例対象宅地等が申告期限から三年以内(当該期間が経過するまでの間に当該特例対象宅地等が分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から四月以内)に分割された場合(当該相続又は遺贈により財産を取得した者が次条第一項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、その分割された当該特例対象宅地等については、この限りでない。

 さて、これも相続税法でトップクラスの優遇規定の小規模宅地等の減額特例です。

 またトップクラスの優遇規定かよ的な感じになりますが、未分割だとばっさりそれらが使用不能になるのが手に取るようにわかります。

 これも以前ブログで紹介しましたが、改めて説明すると、居住してる家の敷地とか貸家の敷地は相続税がめっちゃ安くなるって感じです。

 実はこの規定も未分割だと使用できません。というよりも、そもそもこの規定は取得した側に条件があるので誰が取得するのか分かっていないと条件を満たせない的な感覚ですね。

 こっちの規定については、その敷地を取得した人だけではなく、相続税全体の金額がダウンするので実は他に類をみない優遇規定だったりします。その財産を取得した人だけじゃなくて取得してない人の相続税まで安くするって中々ないです。

 ここが未分割ですと、相続税の全体の金額までオールアップするため、早めに分割を決めて全体が支払うべき相続税額を把握しておきたいですね。

家のイラスト2

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4.その後適用を受けるためには

 とはいえ、申告期限までに未分割だったら上記の規定がまったく受けられないという訳ではありません。

 未分割の申告書を提出する際に、3年以内の分割見込書というものを一緒に提出すれば、分割後に改めて提出すれば上記の優遇規定を使用できるということです。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/2327.htm 国税庁HPより

 逆に言えば、申告期限から3年以内に分割しないと使えません。

 分割は単に規定や法律上のものだけでなく、各相続人の感情や思い入れといった人と人との話し合いですので、相続の中でトップクラスに難しいところでもあります。

 亡くなった方の気持ちを尊重し、残った方同士で諍いを起こさず仲良く分割を完了させたいですね。