前回は相続税の中でもトップクラスの優遇措置の1つ小規模宅地等の特例の外枠を紹介していきました。
配偶者の税額軽減に続いて、適用後の相続税額が0円であっても、相続税申告が必要になる分、相続税全体で見てもトップクラスの優遇措置でしたね。
適用を受けた方だけでなく、相続人全員の相続税額を減らす、というだけで優遇っぷりが分かりますね。これを受けると受けないとでは、目に見えて相続税額が変わってきます。
それでは、前回見てきた条件以外にも、適用を受けるための条件があるのでしょうか。
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小規模宅地等は1つではない?
小規模宅地等にもいくつか種類がある!
小規模宅地等の特例!と一口に言っても、実はその中で更に種類があり、それぞれの条件に合致したものの適用を受けることとなります。
小規模宅地等の種類については、以下の4通り
- 特定居住用宅地等
- 特定事業用宅地等
- 特定同族会社事業用宅地等
- 貸付事業用宅地等
それぞれのざっくりとした適用イメージ
上記4つは、ざっくりと以下に利用されてきた土地に適用があります。
特定居住用宅地等
亡くなった方の自宅の土地
特定同族会社事業用宅地等
亡くなった方の自営業に使われていた土地
特定同族会社事業用宅地等
亡くなった方が役員等をしていた法人に使われていた土地
貸付事業用宅地等
亡くなった方のアパートやマンション等の不動産賃貸業に係る土地
おおざっぱな区分分けとしては、自宅と事業用の土地
特定居住用宅地等は自宅の敷地、それ以外は事業で使われていた敷地に適用のあるもの
というおおざっぱな区分分けの印象で大丈夫です。
例えば、亡くなった方が年金暮らしで特に事業などを自分でやってなければ、事業関係の3点は基本的に受けられません。
今回は、その中でも検討の機会の多い特定居住用宅地等に焦点を当てて解説していきます。
自宅等を借りている場合には、適用もないですね。というか、そもそも財産として計上されません。
特定居住用宅地等・概要
亡くなった方の自宅の土地に対して適用が受けられる小規模宅地等
戸建て・マンション等種類に限らないので、亡くなった方が持ち家の場合にはまず適用を検討出来る部分でもあります。
亡くなった方の条件
亡くなる直前まで、自分の自宅として使用していたこと(但し、老人ホームに入っていたなど、例外もあります)
相続人側の条件
概要
亡くなった方の自宅の敷地を取得した相続人側にもいくつか条件があります。
特定居住用宅地等については、この条件に合致するか否かで適用を受けられる受けられないが決定する場合が多数です。じっくりと吟味しましょう。
取得した方が亡くなった方の配偶者の場合
特に条件はありません。亡くなった方の配偶者が取得した場合には、ほぼ無条件で適用を受けることが可能です。
配偶者の税額軽減に続いて、相続税では配偶者がとても優遇されている代表的な例ですね。
亡くなった方と別居していても、取得した後にその自宅をすぐに売っても、適用を受けることが出来ます。
但し、配偶者の方の場合、先日紹介した配偶者の税額軽減も併用して受けることが出来るので、重複して適用を受けてもオーバースペックになりがちなケースも多々。
他の相続人の取得条件等も加味して、相談するのが良いでしょう。
また、他にも配偶者居住権という制度も最近新設されました。こちらについても併せて考慮した方が良いですね。
配偶者居住権については、また後日にでも解説します。とても複雑です。
取得した方が配偶者以外の親族の場合
配偶者以外の親族の場合、以下の2パターンによって、更に条件が異なります。
- 亡くなった方と同居していた親族
- 亡くなった方と同居していなかった親族
亡くなった方と同居していた親族
同居していた親族の方が取得した場合には、相続税の申告期限までその自宅に住み続けて、所有し続けることが条件となっています。
- 相続後にすぐ自宅を売る
- 相続後に自宅は売らないが、他のところに住み始める
- 相続後に自宅を売ったが、家賃を払って住み続ける
といったことを行うと、適用を受けることが出来ません。
相続後申告期限までその自宅に住み続け、かつ、所有し続けること
が条件となっています。
生活の基盤である自宅に対して、相続人の生活を保護する趣旨でも設けられているので、売ったり他の場所に住むなら、特に必要ない、という感じでしょうかね。
申告が終わっても、申告期限までは守らないといけないので注意です。
亡くなった方と同居していなかった親族
一番複雑なもの特定居住用宅地等。これは一概にこう、と言えるものではなく個々の事情をヒアリングし、適用関係を検討しなければいけません。
かなり複雑な条件があるのですが、まずは簡単な条件から見ていくと
- 日本に住んでる・日本国籍を持っている等
- 亡くなった方に配偶者がいない
- 亡くなった方と同居していた相続人がいないこと
この3つ全てに当てはまらないと、適用を受けることが出来ません。先程紹介した2つに該当する場合には、これは適用を受けられないですね。
これ以後の条件はかなり複雑になってくるのでざっくり紹介すると。
- 過去3年以内に自分の持ち家や相続人の配偶者・その他の親族などが所有している家に住んでいないこと
- 相続時に相続人が住んでいる家を所有したことがないこと
ざっくりと、相続時に持ち家がない、といった印象でも大丈夫です。ちょっと意味合いが変わってきますが。
この辺りは、税理士さんに相談の上、検討を行った方が良いでしょう
減額割合
自宅の敷地のうち、相続税が発生する部分は80%カットされます。
例えば、自宅の敷地が1億なら、2,000万円部分にしか相続税は課税されません。
面積の制限
330㎡までしかこの規定を受けることが出来ません。
但し、自宅の敷地が500㎡あったらまったくうけられないのではなく、500㎡のうち330㎡については80%カットされて、残り170㎡は普通に課税される、という扱いになっています。
次回予告
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このページの執筆者
立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。