前回は、生命保険金の取り扱いについて解説していきました。
単純に非課税で相続税の税額負担が軽減されるだけでなく、遺産分割がまとまらない場合の当面の生活費が確保出来たりと、様々な面でメリットのあるものでしたね。
そんな生命保険金ですが、実は相続税で課税されない場合も……?
Contents
同じ生命保険金でも相続税で課税されることと所得税として課税されることがある?
概要
死亡に伴い支払われる死亡保険金は、前述の通り相続税が課税されるのですが、実は場合によっては相続税では課税されないケースがあります。
具体的には、以下の3税目のうちから、保険料の支払者が誰かによって決定されます
- 相続税
- 贈与税
- 所得税・住民税
保険料支払者が誰かによって、課税される税目が異なる!
死亡保険金を受け取った場合、その保険料を誰が支払っていたのかにより、課税される税目が異なります。
各税目と保険料の支払者の関係は以下の通り
- 相続税→保険料支払者が亡くなった方の場合
- 贈与税→保険料支払者が亡くなった方・受取人以外の場合
- 所得税・住民税→保険料支払者が保険金受取人の場合
相続税の場合の取り扱い
保険料支払者が亡くなった方の場合には、相続税として課税される
亡くなった方が保険料を支払っていた場合には、その亡くなった方に係る相続税として課税されます。
取扱いについては以下の記事を参照していただけると嬉しいです。
非課税規定などがあるので、3パターンのうち税負担が最も軽くなるケースが多いパターンです。そもそも、非課税により課税されないケースも少なくありません
贈与税の場合の取り扱い
保険料支払者が亡くなった方・受取人以外の場合
亡くなった方・受取人の方以外の方が保険料を支払っていた場合には、その死亡保険金を受け取った方に対して贈与税として課税されます。
具体例
亡くなった方A・保険料支払者B・保険金受取人C
Cが受け取った保険金は、保険料支払者のBからの贈与として、贈与税が課税されます。
贈与税は税負担が大きくなりやすい
贈与税は相続税と密接な関係にあるので、税負担が少なくなるイメージもあるかもしれませんが、実は以下のような理由から、税負担が大きくなるケースも少なくありません。
- 贈与税自体の税率が比較的高い
- 贈与税には非課税規定がないので、保険金全額に対して課税
- 支払った保険料に対しても考慮はなし
などの理由から、3パターンの中で税負担が大きくなるケースが多くなる可能性の高いパターンです。
贈与税の確定申告が必要!
贈与税が発生する場合、贈与税申告の確定申告が必要となります。
一般的な確定申告と同じように、贈与(相続が発生した日)の翌年の2、3月中に贈与税申告書を税務署に提出しなければいけません。
相続税申告書とはまた別で手続きを行わなければならないので、注意です
所得税・住民税の場合の取り扱い
保険料支払者が保険金受取人の場合
死亡保険金の受取人が自分で保険料を支払っていた場合には、その死亡保険金を受け取った方に対する所得税・住民税として課税されます。
具体例
亡くなった方A・保険料支払者C・保険金受取人C
Cが受け取った保険金は、Cの所得税・住民税として課税されます。
所得税・住民税としてはどんな風に取り扱われる?
相続税・贈与税とは全く異なるルールで課税される所得税・住民税。具体的な取り扱いとしては以下の通り
- 一時所得として課税される
- 課税金額は「死亡保険金の金額-支払保険料の総額-50万」の半分の金額
- お給料や事業収入などの他の所得と合算して、税率が適用される
課税対象金額には、過去に支払った保険料も考慮され、更に半額しか課税されない
所得税・住民税の場合、相続税などとは異なり、過去に支払った保険料の総額も税金計算上考慮されます。
取得した保険金の金額から、支払保険料の総額を差し引いた後の金額が対象になります。
更に、一時所得特有の軽減措置として、その金額から更に50万円を控除し、その残額の半分しか課税されません。
具体的
取得保険金1,050万円・支払保険料500万円
課税対象:(1,050万円-500万円-50万円)×1/2=250万円→250万円のみ課税対象
税額負担はかなり軽減されます。
お給料や事業所得など、他の所得と合算して税率が決まるので注意
所得税は、所得金額が大きくなればなるほど、適用税率が高くなります。
お給料や事業所得なども、生命保険金の金額と合算されて税率が決定されるため、普段よりも適用される税率が大きくなり、税負担が多くなるケースも。
納税資金に困らないように、事前に税理士さんに相談するなどし、検討を行いましょう。
確定申告が必要!
生命保険金で多額の課税対象が出た場合、会社員さんなどであっても、確定申告が必要となります。
忘れないように注意しましょう。
これらの点も含め、一度税理士さんに相談するのをお勧めします。
保険料支払者が複数いる場合は?
亡くなった方と保険金受取人で半額ずつ保険料を負担している場合などは、上記の取り扱いを併用して適用します。
今の例ですと、半分は相続税・半分は所得税という形で課税される感じですね。
まとめ
- 保険料支払者によって、課税される税目が異なる
- 保険料支払者が亡くなった方と同じ場合は相続税
- 保険料支払者が亡くなった方・受取人以外の場合は贈与税
- 保険料支払者が受取人の場合は所得税・住民税として課税される
このページの執筆者
立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。