こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。
令和4年分確定申告以降、短期退職手当金の取り扱いが新たに創設されます。
働き方改革が叫ばれる今日。以前のような終身雇用としてだけではなく、当初から短期間での就職を前提とした勤務も出ています。
短期間での勤務に対して多額の退職金の支給を受けることで、退職所得の優遇措置を受けることに対するブロックの規定ですね。
短期退職手当等は、短期退職金の収入金額から短期退職手当等に係る退職所得控除を控除した残額が300万円を超えるか否かで取り扱いが異なります。
それでは、退職金が重複している場合、判定に使用する退職所得控除の金額はどうなるのでしょうか。
※このページで紹介する内容は、令和4年以降施行となります。
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
Contents
前提知識・退職金が重複している場合の退職所得控除の取り扱い
退職手当等の種類は「一般退職手当等」「短期退職手当等」「特定役員退職手当等」の3種類
退職手当等には、上記の3種類があります。
その取扱いは簡単に説明すると以下のとおり。
- 一般退職手当等:通常の退職所得の計算を行う。一番税金が安い
- 短期退職手当等:300万円までは通常の退職所得の計算を行う。二番目に税金が安い
- 特定役員退職手当等:2分の1課税が行われない。最も税金が高い。
上記の3種類の退職手当等のうち、2種類以上があったら退職所得控除額はどうなるの?
上記のように、退職手当等の種類によって税額が異なるため、どの退職手当等から退職所得控除をどれだけ控除出来るかが論点になってきます。
基本的には、納税者に有利になるように、税金が高い退職手当等から退職所得控除額をなるべく控除するように出来ています。
ざっくりとした流れは、まず不利な退職手当等の勤続年数で退職所得控除を計算し、控除。
その後、全体の退職所得控除額から先程控除した金額を控除して、一般退職手当等から控除する。
という流れになっています。
短期退職手当等の300万円判定は退職所得控除後の金額で行うけど……?
ここで疑問に思うのが、短期退職手当等の300万円判定を行う際の退職所得控除額はどうなるのか、ということです。
例えば、短期退職金が450万円。全体の退職所得控除額が480万円、短期退職手当等に係る退職所得控除額が200万円の場合。
200万円全部使えれば300万円以下になるが、他に退職所得控除額を使用するのならば判定が変わってくる?
それでは、重複がある場合の取り扱いはどうなるのでしょうか。
短期退職手当等と一般退職手当等がある場合
通常通りの判定を行う。
短期退職手当等と一般退職手当等が重複している場合、短期退職手当等の300万円判定は、通常通り行います。
単純に、短期勤続年数に40万円(重複期間は20万円)を乗じて計算した金額が退職所得控除額となり、短期退職手当等に係る収入金額からそれを控除した残額で300万円判定を行うことなります。
例示・短期退職金400万円、短期勤続年数5年(重複期間なし)、全体の退職所得控除額800万円の場合
300万円の判定は以下のとおり。
400万円-40万円×5年=200万円≦300万円
よって、全て2分の1課税が行われる。
今回は簡便化のため重複期間なしで行いました。
特定役員退職手当等と短期退職手当等がある場合
少し特殊な取り扱い・特定役員退職手当等に係る退職手当等を控除して計算
特定役員退職手当等と短期退職手当等がある場合、全体の退職所得控除額から特定役員退職所得控除額を控除した金額で短期退職手当等の300万円判定を行います。
少し特殊な取り扱いの感じがしますね。
例示・短期退職金400万円、勤続年数5年(重複期間なし)、全体の退職所得控除額200万円、特定役員退職所得控除額120万円
300万円の判定は以下のとおり
400万円-(200万円-120万円)=320万円>300万円
よって、300万円を超える部分は2分の1課税が行われない。
今回は簡便化のため重複期間なしで行いました。
出典・参考条文
上記の取り扱いの出店・参考条文は以下のとおりです。
興味のある方は是非どうぞ。
財務省HP令和3年度税制改正の解説・所得税法等の改正:https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2021/explanation/p085-139.pdf
所得税法施行令第71条の2の1・5
財務省HP令和3年度税制改正政令・所得税法施行令の一部を改正する政令の新旧対照表よりhttps://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2021/seirei/shinkyu/1shotoku.pdf
短期的に他会社へスポットで入社する場合や小規模企業共済掛金等を受ける場合は要注意
短期退職手当等の取り扱いは、短期的に他会社へスポット入社する場合の税制優遇へのブロックです。
他会社へスポット入社して戦力になった場合や、多くの方がやっている小規模企業共済掛金等で退職手当等の取り扱いになる支給を受けた場合など注意が必要です。
一生に一度ぐらいの取り扱いだからこそ慣れている人も多くありません。
退職金を取得したら、税理士さんに相談するようにしましょう。
まとめ
・一般と短期の重複は通常どおり行う。短期と特定役員の重複の場合は少し判定が特殊になる
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
このページの執筆者
立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。