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法人が行う仮想通貨(ビットコイン)に対する原価(経費)の期末見積計上で争った裁決事例【法人】

ジャガーネコ
ジャガーネコ
一時期、仮想通貨がすごく流行ったよね。
ミケ君
ミケ君
あの時は仮想通貨バブルな感じだったね。新しい通貨って感じで!処理的にも特殊なところがあるのかな?
ジャガーネコ
ジャガーネコ
最近は仮想通貨の処理も整備されてきたね。それじゃあ、少し特殊な内容で争った裁決事例を確認していこう!

こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。

一時期流行した仮想通貨。新しい通貨として脚光を浴びましたね。

今日では、比較的落ち着いたポジションに収まった感覚があります。噂では、給与の支払いを仮想通貨で行っていたところもあると聞きますが……本当なのでしょうか。

新しい概念の仮想通貨。税務処理としても最初は追いついてないところもありましたが、最近は整備がされてきた印象があります。

そんな仮想通貨に対して、少し特殊な内容で争った裁決事例を紹介します。

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。

仮想通貨で争った裁決事例

売却収益に対する原価及び借り入れた仮想通貨の返還義務の履行のために売却収益に対する原価の見積計上で争った事例

一時期流行した新しい概念である仮想通貨。新しい概念であるが故に、まだまだ税務的に整備がされつくしていない点も多々あります。

そうなると、どうしても個別の解釈が難しく、ケースによって様々な解釈が生まれてしまうもの。

まだまだ新しい内容。令和2年の年末に裁決が行われた事例として、仮想通貨の原価の見積計上や返還債務を履行するための支出金額の見積計上について争った裁決事例を紹介します。

ちなみに、仮想通貨全般のことを税法では「暗号資産」と呼びます。かっこいいですね。

このページでは、比較的馴染み深い呼び方として仮想通貨として表現します。

出典

出典:国税不服審判所ホームページ(令和2年12月4日裁決・争点番号300702990)

なお、裁決事例集には登載されておりません。

令和2年12月4月裁決・仮想通貨に対する原価の期末見積計上で争った裁決事例

請求人(法人側)の主張

期末に原価として計上した額は、売却収益に対する原価を見積計上したものである。

また、将来において借り入れた仮想通貨に係る返還債務を履行するために支出される金額を見積もったものでもある。

よって、上記の見積金額は、今回の事業年度の損金の額に算入できる。

原処分庁(税務署側)の主張

本件仮想通貨の売却収益に対する購入対価は、見積計上するまでもなく、既に全て原価に算入されている。これを更に、見積原価として追加的に計上する理由は認められない。

また、本件期末見積計上額は、本件仮想通貨の返還債務を履行した場合に生ずる場合の損失の見積計上額と認められる。つまり、売却収益に対応するものとは認められない。

よって、収益に対応するものとも認められず、債務が確定した費用等とも認められないことから、法人税法第22条第3項第1号・3号に該当せず、損金の額に算入されない。

結論

棄却(損金の額に算入されない)

本件裁決事例のポイント

経費として計上出来るのは、収益獲得するためのものや債務が確定した費用等に限られる

経費として計上出来るのは、収益獲得に対応するものや、債務が確定している費用等に限られます。

請求人の主張として、経費として認められると主張していた見積計上額の内容は以下の2点

  • 売却収益に対応するもの
  • 将来の返還債務を履行するためのもの

上記の2点について、原処分庁は以下のように対応しています。

そもそも売却収益に対応する購入対価は原価として計上されていた

1点目では、売却収益に対応する原価の追加見積計上としています。

しかし、売却収益に対応するものを見積計上したとしていますが、そもそも売却収益に対応する原価は既に全額計上済みであったとのことでした。

それに更に、見積額を追加計上する理由はないよね、ということで対応が行われています。

仮想通貨の返還債務を履行するための見積金額は、債務が確定した費用等ではない

2点目では、借り入れた仮想通貨を将来において返還債務を履行するために支出される金額として見積計上したとの主張をしています。

法人税法上では、債務が確定した費用等しか損金に算入することは認められません。将来返還債務を履行するための費用の見積計上は、確定した費用には該当しないとのこと。

よって、こちらも、確定していないから損金算入は認められない、との対応が行われています。

仮想通貨は新しい概念。まだまだ税務的には難しい

仮想通貨は新しい概念故に、税務的にはまだ整備が行き届いていない箇所もあります。

個別での対応がされていない論点に対する対応程、解釈が多く難しいもの。仮想通貨を運用する際は、根拠を常に確認して行うように注意しましょう。

まとめ

仮想通貨の見積計上の是非についてのまとめ

・本裁決事例では、見積計上は認められない

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
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このページの執筆者

立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史

※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。