こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。
確定申告真っ只中!内容によっては、申告が必要な収入なのかどうかや、経費として計上出来るか否かといった不安もあるのではないでしょうか。
様々な判断の中、近年多く生じていると感じている1つの判断が、事業所得に該当するか雑所得に該当するかの判断。所謂、本業か副業かですね。
過去にも何件か紹介してきましたが、今回は外貨取引によって生じた為替差損益が事業所得が否かについて確認していきます。
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
Contents
為替差損益とは?
外貨建て取引時のレートの差額によって発生するもの
為替差損益とは、外貨建て取引を行った際のレートの差額によって生じるものになります。
例えば、1ドル100円の時に1ドルを購入し、1ドル110円の時に1ドルを売却すると、10円分差額が生じ利益になります。これが為替差益ですね。
逆に、損が生じた場合には為替差損になります。
為替差益の場合には利益、為替差損の場合には損失
状況にもよりますが、為替差益が生じた場合には利益として計上し、為替差損が生じた場合には損失として計上を行います。
このあたりは、株の売買と似た感覚ですね(株と違って総合課税ではありますが。)。
それでは、この為替差損益は事業所得と雑所得どちらに該当するのでしょうか。
事業所得か否かで争った裁決事例
生じた為替差損益は、事業所得か雑所得か。
今回は、これがどちらに該当するかで争った裁決事例を紹介します。
出典
出典:国税不服審判所ホームページ(令和2年3月10日裁決・争点番号200901059)
なお、裁決事例集には登載されておりません。
令和2年3月10日裁決・為替差損が事業所得か否かで争った裁決事例
請求人(納税者側)の主張
自分は、本年において外貨取引により生じた為替差損がある。
これは事業所得に該当する。
原処分庁(税務署側)の主張
請求人は、資金調達手段や情報収集のための特別の人的・物的設備を整えることもなく本件外貨取引を行っていた。
また、請求人が営む他の事業により多額の所得を得ているのに対し、本件外貨取引の回数は少なく、収益も得ていない
客観的にみれば、他の事業を本業として、これによる安定した所得を得て生活費を賄いつつ、その傍らで、本件外貨取引を行っていたものと考えられる。
これに加え、本件外貨取引は、その実態を踏まえると、相当程度の期間継続して安定した収益を得られる可能性も乏しいものであるから、本件外貨取引は、社会通念に照らして、対価を得て継続的に行う事業に該当するということはできない。
したがって、本件為替差損は、事業所得に該当しない。
結論
棄却(事業所得には該当しない。)
本裁決のポイント
社会通念上、対価を得て継続的に行う事業に該当しない
今回のポイントとしては、そもそも、社会通念上事業には該当しないという点でした。
特に、資金調達や人的・物的設備を整えずに外貨取引を行っていたことや、その他の事業で生活費等を賄っていること。
更に、外貨建て取引自体の実態を見ても、相当程度の期間継続して安定した収入を得られる可能性も乏しい。
上記のような点から、社会通念上、対価を得て継続的に行う事業に該当する事は出来ないとして、事業所得に該当しないという判断でした。
何で事業にしたかった?
今回、他でも事業があったということで、外貨建て取引以外でも事業所得があったとのことでした。
なぜ為替差損を事業所得にしたかったというと、お馴染みの損失を通算したかったからでしょうか。
損失を通算すると、他の利益と相殺出来て課税所得が減少します。そのため、事業所得に該当させたかった、ということですね。
事業所得と雑所得の判断は難しいところ
様々な働き方が出ている今日。
事業所得は様々な恩恵がある一方、該当するかの判断は難しいところです。
事業所得か雑所得か、判断が難しいところですが、客観的な視点等から確認していきましょう。
まとめ
・社会通念上、今回は事業には該当しない
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
このページの執筆者
立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。