裁決事例紹介

事業者と口座の管理者のどちらに収入が帰属するかの事例【確定申告書・個人事業主】

ジャガーネコ
ジャガーネコ
収入を得た方はその収入を基に確定申告が必要だよ!
ミケ君
ミケ君
こっそりジャガーネコさんの口座に全部売上入金されるようにしておいたから、僕は売上計上しなくても大丈夫だね!
ジャガーネコ
ジャガーネコ
税金以前に怖いよ。

こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。

確定申告時期で売上や経費の認識をしている方も多いのではないでしょうか。

この時期によくある質問として、自分の名義以外の口座に振り込まれたお金について、その方で確定申告をしなければいけないのか?というものがあります。

何らかの事情で、奥さんの口座等を入金先にしていた場合等ですね。

それでは、その場合にはどのような帰属になるのでしょうか。

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。

収入の帰属は、実質的に帰属する方に帰属する

自分以外の名義であっても、実際に売上を作った方に帰属

収入の帰属については、形式的なものではなく、実質的なもので確認をします。

例えば、Aさんが事業活動を行って得た収入がBさんの口座に入金された場合ですね。この場合、Bさんの口座に入金はされているものの、Aさんの収入になります。

とはいえ、じゃあ問題ないね!という訳ではなく、実際問題とてもややこしいことにはなるので、なるべく事業活動者と入金先の名義は統一するようにしましょう。

じゃあ法人と個人の境目は?

ここで1つ問題になってくるのが、法人と個人事業主の境目はどうなるのかというところ。

今回は参考に、法人に預けていた個人名義の預金通帳に入金された場合の収入の帰属先で争った裁決事例を紹介します。

出典

出典:国税不服審判所ホームページ(令和2年3月26日裁決・争点番号200401010)

なお、裁決事例集には登載されておりません。

令和2年3月26日日裁決・飲食業の所得について法人に帰属するか個人に帰属するかで争った裁決事例

請求人(納税者側)の主張

自分は、飲食業に係る所得について、事業所得として申告を行ったが、これは自分ではなく、法人に帰属するべきだと考える。

自分名義の通帳に入金をされているか、この入金先の預金通帳等は、法人に預けており、法人が管理をしている。

そのため、今回の入金に係る収入の帰属は、法人にあるものだと考えられる。

原処分庁(税務署側)の主張

今回の飲食業に係る事業を行うための営業許可等の名義人は請求人である。

また、本件事業に係る経費は、請求人が現金で直接支払うか、請求人了承の下に本件口座から出金されている。このことから鑑みると、本件事業に係る資金を請求人管理していなかったとは言い切れない。

本件口座から請求人の所得税等が引き落とされるなど、請求人がその利益を処分していたと認められる。本件口座からは使途不明の現金が出金されており、その現金を本件法人が取得したと認められる証拠はなく、また、請求人が従業員の採用、従事管理、業務上の指示、報酬の支払を行っていた。

上記の事からすると、請求人が本件事業を遂行していたと認められ、以上を総合すると、請求人が本件事業の事業主であり、その収益を享受する者と認められる。

よって、本件事業の収入の帰属先は請求人である。

結論

棄却(請求人に収入は帰属する)

本裁決のポイント

実質的に事業を遂行していたのは請求人という判断

今回、収入は請求人に帰属するという判断になりました。

様々な要素はありますが、下記のような点から、実質的な事業遂行者は法人ではなく請求人にあるという判断ですね。

①営業許可等の名義人が請求人

②本件事業に係る経費の支払は請求人自身の金銭で行われていた

③本件口座から、請求人の所得税等が引き落とされていた

④今回の利益の処分を請求人が行っていた

⑤事業に係る人事等のバッググラウンド業務も請求人が行っていた

法人が行っていたのか個人が行っていたのかは難しい判断にはなりますが、今回は個人である請求人が行っていたという判断ですね。

実態をしっかり確認していきましょう

今回のケースは複雑なものでしたが、一般的に、自分の業務で得た収入を親族等の口座に入金するというケースはそれなりにあります。

この際には、入金先に縛られるのではなく、実態として、誰による事業遂行により生じた収入等であるかをきっちりと判断していきましょう。

まとめ

収入の帰属先のまとめ

・実質的に帰属される者に収入は帰属される

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
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このページの執筆者

立川のネコ好き税理士 藤本悟史

※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。