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領収書等の氏名は真実の氏名でなくても良いかで争った裁決事例【確定申告・個人事業主】

ジャガーネコ
ジャガーネコ
消費税の仕入税額控除の適用を受けるためには請求書等の保存が必要なんだよ。
ミケ君
ミケ君
請求書等には氏名が必要なのか……肉球でもオッケー?
ジャガーネコ
ジャガーネコ
ダメです……。

こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。

消費税の仕入税額控除を適用するための要件として、請求書等の保存が挙げられます。

最近話題となっているインボイス制度もこの請求書等の保存に影響してくるところですね。

そんな請求書ですが、消費税法では記載事項が明確に定められています。

それでは、どんな記載事項が必要なのでしょうか。

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
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消費税法における請求書等

消費税法における請求書等とは、記載事項が記されたもの

消費税における請求書等とは、一般的な概念としての「請求書」ではなく、消費税法上で規定された記載事項が記された書類のことを指します。

例えば、取引先に請求書を出したとしても、消費税法上で規定されている記載事項に漏れがある場合には、「消費税法上の請求書等」には該当しません。

それでは、消費税法上の記載事項にはどんなものがあるのでしょうか。

消費税法上の請求書等の記載事項

消費税法上、請求書等に記載が要求される事項は下記5つです。(インボイス制度が開始された場合、更に登録番号が追加されます。)。

①書類作成者の氏名又は名称

②取引年月日

③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

④税率ごとに区分して合計した税込対価の額

⑤書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

上記の記載事項があることで、消費税法上の請求書等に該当する事になります。

ところで、上記には氏名の記載が求められていますね。

氏名について「真実の氏名」と記載がないけど、偽名でもいいの?

上記の請求書等の記載事項には氏名が求められています。しかし、「真実の氏名」とは記載がありません。

それでは、請求書等に記載する氏名は偽名でもいいのでしょうか。

今回は、請求書等に記載する氏名は真実の氏名の記載がなくても消費税法上の請求書等に該当するか否か(=仕入税額控除の適用を受けることが出来るか否か)で争った裁決事例を紹介します。

出典

出典:国税不服審判所ホームページ(令和2年6月24日裁決・争点番号500601063)

なお、裁決事例集には登載されておりません。

令和2年6月24日裁決・消費税法上の請求書等における氏名については、真実の氏名でなくても良いかで争った裁決事例

請求人(納税者側)の主張

請求人が保存する雑貨等の仕入れに係る領収証等は、いずれも架空のものではなく適法に保存がされている。

また、法令上、請求書等に真実の仕入先の氏名等の記載を要求する明文の規定は存在していない上に本人確認も要求されていない。

よって、真実の氏名の記載がなかったとしても請求書等の保存要件を満たし、仕入税額控除の適用を受けることが出来る。

原処分庁(税務署側)の主張

消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第7項に規定する帳簿及び請求書等については、同条第8項及び第9項に列挙された事項(上記の事項)が記載された帳簿及び請求書等を意味する。

また、消費税法上「真実の氏名」の明文はないが、当該記載は真実の記載であることが法令上当然に要求されているというべきである。

請求人が保存していた領収証に記載された仕入先の氏名が真実の記載であったとも認められない。

よって、請求人が同乗だい7項に規定する請求書等を保存していたとはいえず、本件仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることは出来ない。

結論

棄却(請求書等には該当せず、仕入税額控除の適用を受けることは出来ない。)

本裁決のポイント

氏名は法令上当然に真実の氏名が要求される

消費税法上では、確かに「書類作成者の氏名又は名称」とは規定されていますが「書類作成者の真実の氏名又は名称」とは規定されていません。

そのため、真実の氏名でなくても問題ない……訳はなく、これらの記載は真実の記載であることが大前提となっています。

そもそも、真実の記載でなくても良いのなら、適当な記載であっても何でもよくなってしまいます。

明らかに当然のことは明文化されていなくても要求される、ということで、消費税法に規定する請求書等の記載事項については当然に真実の記載であることが要求されます。

よって、真実の氏名とは認められない記載がされた請求人の書類については、消費税法上の請求書等には該当しないということですね。

それに伴い、仕入税額控除の適用要件である請求書等の保存要件を満たさないため、仕入税額控除の適用も受けることが出来ないという結果になります。

請求書等はしっかりと確認・保存しよう

消費税法上の請求書等は、一般的な概念の請求書とは異なり、記載事項は明確に規定されています。

今後、インボイス制度が開始された場合には、記載事項の重要度がより高くなります。

何気なく発行している請求書等。内容について、確認・保存を怠らないように注意しましょう。

まとめ

消費税法上の請求書等の氏名は真実の氏名でなくても良いかのまとめ

・当然に真実の氏名であることが要求される

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このページの執筆者

立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史

※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。