居住用賃貸建物に「係る」課税仕入れ等の税額とは!?
消費税
現行で有名な税金の中では最も歴史が浅い新参ものの税金。それにも係わらず、スポットライトを浴びまくっているスーパールーキー(30歳)でもある。
消費税の前任?にもなる、特別地方消費税があったり、物品税があったりと、消費税自体の考えは前からあったようですが、消費税自体は平成になってから創設された新しい税金になります。
そんな新しい税金故、整備が整っていない箇所もあり、今日まで様々な税金の抜け道も考えられていました
そして、遂に来月の令和2年10月1日に1つの大きな改正が
居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限!!
Contents
居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限とは?
居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないことになりました。
さっぱりとした一文ですが、中々大胆な改正です。
すごーくざっくりと消費税の考え方について解説すると、消費税は基本的に我々消費者が負担することとなっています。
しかし、我々消費者のところに到着するまでに卸売など事業者→事業者の取引が多数。
そこで、事業者は、もらった消費税から払った消費税(仕入税額控除)をマイナスした残りを支払うことで、対応していたんですね。
そこの、本来マイナス出来る分の払った消費税(仕入税額控除)を居住用賃貸建物に係るものについては対象としないということになります。
これからの大家さん達への影響は!?
基本は影響あんまりない
実際、私はそこまで大きな影響はないのかなと思います。
まず、消費税が発生する人の条件として
一昨年に消費税が発生する売上が1,000万円以上あった方
が対象となります。
また、居住用の家賃は、消費税が非課税です。
居住用賃貸に係る家賃は消費税が非課税なので、居住用アパートとか居住用マンションしか貸付けていない方は、そもそも消費税が発生しないので、消費税を発生させる特別な手続きなどをしない限り関係ありません。
新しくアパートとかを取得する場合は?
新しくアパートなどを取得する場合、アパートに係る一時的に大きな消費税を支払うことになりますので、何とか出来ないかな、と考えることがあると思います。
それを考えた結果、金地金を売る買う(後述)に結びついたりして、今回の改正の基となったりしています。
本来は、これらの消費税は考慮出来ないですので、基本的な消費税の考え方に乗っ取れば、元々と比較して影響はあまりないです。
金地金を売る買うとかの歴史のせいで、色々と複雑な制度がたくさんできてしまったので、そこを考えなければいけない点としたら結構影響はありますが……調整対象固定資産とか高額特定資産とか課税制度選択届出書とか
とはいえ、これらも消費税が発生する人が前提ですので、一昨年に居住用以外の売上が1,000万円とかない場合には特に考慮しなくても良かったりします。
これからの留意点(税理士向け)
実装後、影響がある方が留意するべきことを簡単に解説します。
影響があるものとして、様式的なものは以下の通り
- 対象は高額特定資産等に該当するのみ
- 途中で売ったり転用したら調整がある
高額特定資産・調整対象自己建設高額特定資産に該当する場合のみ
今回の制限に対象になるのは、1,000万円以上の高額特定資産等に該当する場合のみです。
800万円とかの居住用賃貸建物などについては、影響がないので注意しましょう
特に、土地と建物が一括で表記されている場合などは、ぱっと見1,000万円以上に見えちゃうので注意が必要ですね。
途中で売ったり、事務所用などに用途を変更した場合には調整あり
居住用賃貸建物を第三年度の課税期間の末日までに売ったり、事務所用などに転用した場合には、居住用賃貸建物に係る消費税について、調整を行うことが出来ます。
途中で売却した場合
第三年度の課税期間の末日までに売却した場合、次の算式で計算した金額を、仕入控除税額に加算出来ます。
算式
居住用賃貸建物の課税仕入れ等に係る消費税額×
その建物で事務所用などで貸していた家賃の総額+売却代金/その建物に係る家賃の総額+売却代金
例:居住用建物の消費税1,000万円・居住用家賃総額800万円・事務所家賃総額0万円・売却価額7,200万円
1,000万円×
0+7,200万円/800万+7,200万円=900万円を加算
課税仕入れのうち、課税売上に対応する部分だけを抜き出す、というイメージですね。
途中で用途を変更した場合
第三年度の課税期間の末日までに転用した場合、次の算式で計算した金額を、第三年度の課税期間に係る仕入控除税額に加算出来ます。一般的な転用とは少し異なるので注意
算式
居住用賃貸建物の課税仕入れ等に係る消費税額×
事務所用家賃の総額/家賃の総額
例:居住用建物の消費税2,000万円・居住用家賃総額600万円・事務所用家賃400万円
2,000万円×
400万円/600万円+400万円=800万円を第三年度の課税期間の仕入控除税額に加算。
こちらも、事務所用家賃を抜き出すというイメージ。途中で転用しても、調整を行うのは第三年度の課税期間なので注意です。
居住用賃貸建物に係る課税仕入れの税額って何だろう
そりゃ建物の取得価額でしょ!という印象ですが
居住用賃貸建物に「係る」課税仕入れの税額ですので、どこまでが「係る」課税仕入れに含まれるのかまだ分かりません
その居住用賃貸建物に係る仲介手数料などの取得費になるもの
その居住用賃貸建物に係る修繕費・水道光熱費などのランニングコスト
なども制限の対象になるのでしょうか。ここについては、まだ定かではありませんが
個人的には、取得費は全体的に制限の対象になるんじゃないかな~と思います。何となくですが。
これらの取り扱いについては、賃貸借期間中というより、前述の売却した際に影響が出てくるんじゃないかな、と思います
大胆に見えるけど、そもそも本来はほぼ仕入税額控除の対象にならない
ここまで見て、一見、めっちゃ増税じゃん!!みたいに見えますが、実は、普通にやっていれば元々居住用賃貸建物に係る課税仕入れについては、ほとんど仕入税額控除の対象になりません。
1から説明すると、かなり長くなってしまうので、簡潔に言うと
- 仕入税額控除の対象になるのは、その支払に対応する売上に消費税がかかる場合
- 居住用賃貸の家賃は、非課税なので消費税かからない
- 売上に消費税がかからないので、その売上に対する居住用賃貸建物に係る支払についても消費税はマイナス出来ない
という流れになります。一括比例配分方式とか、他にもまぁ色々あったりしますが省略。
それでも消費税をマイナスする方法があった
元々、ほぼ仕入税額控除の対象にならないのに、何で今更明言を?
その理由として、金地金を売買しまくれば、マイナス出来る部分が多くなっていたから、というものが挙げられます。
居住用賃貸建物と思ったらいきなり金地金出てきて意味わからなくないですか?私は意味わかりません。
そんな意味分からないことですが、とにかく、金地金を買って・即・売却を行うことで、居住用賃貸建物に係る課税仕入れも出来たってことなんです。すごいこと考えますよね。
さらっとだけ、以下の動画でも紹介しています
今回は、それが横行していたので、塞いだということですね。それ以前にも、自動販売機設置したらOKとか色んな歴史も辿っていたのですが、それはまたいつか解説しましょう。
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このページの執筆者
立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。