個人事業主・フリーランスの方向け

自分が生まれる前に土地を取得するのは不可能ということで争った裁決事例【確定申告・譲渡所得】

ジャガーネコ
ジャガーネコ
不動産売買に係る譲渡所得の計算は、不動産の取得に要した費用等を収入から差引くんだよ。
ミケ君
ミケ君
相続や贈与で取得した場合にはまた別の扱いなんだよね。
ジャガーネコ
ジャガーネコ
相続や贈与で取得した不動産の取得時期等について争った裁決事例を見ていこう。

こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。

秋も深まってきた今日この頃。涼しくなってくると確定申告の足音が聞こえてきますね。

確定申告といえば個人事業主のイメージが強いかと思いますが、その他にも土地や建物といった不動産の売却に対しても確定申告が必要となってきます。

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。

不動産売買に係る確定申告の方法

取得時期は、実際に取得した時

不動産売買について、取得時期は非常に大切になります。例えば、取得してから約5年以内に売却する場合には所得税率が30%(復興特別所得税考慮無し)になったり、軽減規定の適用要件になっていたりします。

取得時期は当たり前ですが、その本人が取得した時期となります。

ただ、取得時期にも特例があります。

相続や贈与で取得した場合には、取得時期を引き継ぐ

相続や贈与(他だと低額譲受で損失の場合等)は、元々の持ち主の取得時期を引き継ぎます。

例えば、お父さんが昭和50年に取得した土地を令和3年に相続(単純承認の場合。以下同じ。)により取得した場合、取得時期は令和3年ではなくお父さんの取得時期である昭和50年とみなされます。

生まれる前の取得は不可能では?

ここで、1つ疑問になるのが、自分が誕生する前に取得するのは不可能ではないかということ。

例えば、平成10に生まれた方が、昭和50年に不動産を取得するのは不可能です。

それと同じように、上記の例で、昭和50年に土地を取得したお父さんの取得時期を平成10年生まれの方が引き継ぐのは不可能ではないかということ。

今回は、生まれる前の取得は不可能か否かで争った裁決事例を紹介します。

相続や贈与で取得した不動産について、生まれる前の土地の取得は不可能だからその適用はないと争った裁決事例

出典:国税不服審判所ホームページ(令和2年12月15日裁決・争点番号201304026)

なお、裁決事例集には登載されておりません。

令和2年12月15日裁決・生まれる前の土地の取得は不可能だから取得時期は相続時として争った裁決事例

請求人(納税者側)の主張

自分が譲渡した土地は、祖父が取得→祖母が祖父より相続→自分が祖母より相続、という流れで取得したものである。

所得税法第60条(贈与等により取得した資産の取得費)第1項によれば、相続により取得した土地は祖父の取得時期等を受け継ぐものとされる。

しかし、祖父取得時期において、自分はこの世に誕生していない。

この世に誕生していない者が土地を取得することは不可能である。よって、所得税法第60条第1項の規定の適用はなく、祖母から相続取得した時期が取得時期となる。

原処分庁(税務署側)の主張

本件土地は、祖父が取得し祖母が相続取得し請求人に相続取得されている。

その間において生じた資産の増加益については具体的に顕在化しておらず、各相続時点において増加益に対する課税は繰り延べられている。

つまり、当該土地に対しての増加益に対する課税は行われていない。

よって、所得税法第60条第1項の規定により譲渡所得の計算を行う際は、祖父の取得時期・取得費等を引き継いで、保有期間は全て通算されることになる。

結論

棄却(取得時期は祖父の取得時期となる)

本裁決のポイント

資産の増加益が具体的に顕在化していないから引き継ぐ

贈与や相続により取得した資産に対しては、基本的に資産の増加益たる譲渡所得の課税が行われずに課税の繰延が行われることになります。

これらの繰延の事情を鑑みて、祖父の取得時期や取得費等を引き継ぐという判断になりました。

誕生していない時に取得出来ない……?

請求人の主張である「誕生していない時に土地は取得できない」というもの、一見突拍子もないように見えますが、一理はあります。

だからこそ、みなす規定なのかもしれませんね。

取得時期は昔の方がいい。本当の目的は別にある?

取得時期ですが、基本的に取得時期を短くすることにメリットはありません。どちらかというと長い方が様々なメリットがあります。

にもかかわらずなぜ請求人は取得時期を短くしたかったのか。

恐らくですが、取得費を祖母の相続時の時価にて計算をしたかったのかなと思います。

取得費が不明等で譲渡所得が大きくなってしまう。

その対策として、取得時期と同時に取得費も引き継がないことで、祖母の相続時の時価で計算を……という考慮なのでしょうか。

そうなると、課税の繰延云々で反論した原処分庁の主張も分かりますね。

取得費は譲渡所得の計算で大切なもの。諦めず税理士さんに相談をしよう

取得費は譲渡所得の計算上、非常に大切なものになります。

不明といえども、全く手がない訳ではありません。土地や建物、不動産を売却した際は、税理士さんに相談することをおススメします。

まとめ

自分が誕生する前の取得は不可能として取得時期で争った裁決事例

・取得時期や取得費は自分の誕生前であっても引き継ぐ

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。

このページの執筆者

立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史

※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。