かなりマニアックな話です。
相続が発生した際、財産の取得方法については大きく分けて
- 遺産分割協議書を作成して分割取得
- 被相続人が遺した遺言書に従って取得
する方法の2パターンがあります。
遺産分割協議書を作成して取得する場合、相続人が遺産分割協議書を作成しなければいけないのですが、初めて記入する内容で戸惑うことも多いのではないでしょうか。
被相続人の財産を調査して~~金額を確定させて~~等々、労力のかかる調査が必須となります。
その中で、思いもよらない財産や債務が発見されることもしばしばあります。
Contents
被相続人に対する借金や相続人に対する借金
被相続人⇔相続人間でお金の貸し借りがあった場合はどうなる?
被相続人の財産調査をしていると、相続人の方から
私は被相続人にお金を貸していた!
と伺うことがあります。
逆に、被相続人からお金を借りていた場合、先にこちらからその旨をお伝えすると、ほとんどの相続人の方は、お金を借りていた旨をお伝えしてくれます。
それでは、この被相続人⇔相続人間でのお金の貸し借りは、相続税上どう扱うのでしょうか。
親族間でのお金の貸し借りも相続税の対象!
概要
親族間でお金の貸し借りがあった場合、その貸し借りについても相続税の対象となります。
被相続人が相続人にお金を貸していた場合
被相続人が債権者、相続人が債務者という場合には、被相続人から相続人への貸付金等となり
その貸していた金額が相続財産として計上されます。
厳密に言うと、貸していた金額だけでなく、未経過利息についても財産計上を行うのですが、親族間での貸し付けで利息を設定していることはあるのでしょうか。
被相続人が相続人からお金を借りていた場合
被相続人が債務者、相続人が債権者という場合には、被相続人が相続人に対して借入金等(借金)をしていたこととなり
その借りていた金額が債務計上されます。
相続税的には債務計上すれば、税額は少なくなるので有利ですが、お金を貸していた相続人からすると、少し複雑な気持ちになることも多いのではないでしょうか。
被相続人⇔相続人間での貸付金・借金を取得・承継したらどうなるの?
被相続人⇔相続人間での貸付金や借金を取得、承継した場合、取得者によって取扱いが異なります。
- 貸し借りをしている当事者以外が取得した場合
- 貸し借りをしている当事者が取得した場合
貸し借りをしている当事者以外が取得した場合
取扱いは変わらない!
貸し借りをしている当事者以外が取得した場合、通常の借金や借入金と取扱いは特に変わりません。
- 被相続人が相続人Aにお金を貸しており、その貸付金を相続人Bが取得した場合→債権者相続人B・債務者相続人Aとなり、AはBにお金を返さなくてはいけません
- 被相続人が相続人Aからお金を借りており、その借入金を相続人Bが取得した場合→債権者相続人A・債務者相続人Bとなり、BはAにお金を返さなくてはいけません
相続税上の取り扱い
他の貸付金や借入金と変わらず、普通に財産・債務に計上されます。
貸し借りをしている当事者が取得した場合
混同発生!?
債権者と債務者が一緒になるので、その貸付金・借入金は混同消滅します。
自分に対して自分がお金は返せないので、必然的に消滅する訳です。千年のパズルからもう1人の僕は出てきません。
ちなみに、この混同は相続税法の話ではなく、民法での話になります。相続税はたまに民法での取り扱いが出てくるので大変ですね。法人税の会社法程ではありませんが。
混同って何?
混同とは、債権者と債務者が同じ人(=自分同士)になったことで、その債権債務が消滅することを言います。条文の民法としては以下の通り
第520条【混同】
債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
相続税上の取り扱い
混同によって取得した瞬間、その貸付金・借入金は消滅しますが
相続税的には特に変わりなく財産・債務に計上されます。
消滅するから計上しなくていい!という訳ではないので注意
次回予告
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このページの執筆者
立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。