相続税

租税特別措置法第69の4・小規模宅地等の特例減額

さて、相続税というのは本来、亡くなった方から取得した遺産の一部を税金として納めるということをイメージしています。そのため、住んでいた家とかその敷地とかにも例外なく相続税が課税されることとなります。

最近はオリンピックやら何やらで地価の上昇があり、ご自宅の土地の値段がかなーり高くなっていることもそれなりにあります。

そこで問題になってくるのが「遺産が自宅と少ない預金しかないから相続税が払えないよ!!」という問題です。

お金がないのならお家で納税すればいいじゃない、なんて数世紀前の歴史上の人物が言いそうな言葉が聞こえてきそうですが、そこは相続税。そんな無慈悲なことはしません。

そんな訳で今回は相続税法の中でも超重要な小規模宅地等の減額特例について紹介しましょう!!

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家のイラスト2

第六十九条の四 個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族(第三項において「被相続人等」という。)の事業(事業に準ずるものとして政令で定めるものを含む。同項において同じ。)の用又は居住の用(居住の用に供することができない事由として政令で定める事由により相続の開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていなかつた場合(政令で定める用途に供されている場合を除く。)における当該事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用を含む。同項第二号において同じ。)に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう。同項及び次条第五項において同じ。)で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるもの(特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等に限る。以下この条において「特例対象宅地等」という。)がある場合には、当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、当該個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部でこの項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をしたもの(以下この項及び次項において「選択特例対象宅地等」という。)については、限度面積要件を満たす場合の当該選択特例対象宅地等(以下この項において「小規模宅地等」という。)に限り、相続税法第十一条の二に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該小規模宅地等の価額に次の各号に掲げる小規模宅地等の区分に応じ当該各号に定める割合を乗じて計算した金額とする。

一 特定事業用宅地等である小規模宅地等、特定居住用宅地等である小規模宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等 百分の二十

二 貸付事業用宅地等である小規模宅地等 百分の五十

電子政府の総合窓口 イーガブより引用

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=332AC0000000026#CH

さて、小規模宅地等の特例減額とは、ざっくり言うと自宅と店舗と貸しているアパートとかについては相続税の負担をめっちゃ軽くするよ、という規定です。

なぜこのような規定があるのかというと、遺産が自宅と少ない預金だけだったりした場合、預金だけで相続税が払えず自宅の売却を行わなければいけなかったり、遺族の貯金から払わなきゃいけなかったりとかなり負担が大きくなったりするからです。

例えばありえそうなシチュエーションでは以下のようなものでしょうか。

シチュエーション1・清水の舞台から飛び降りる覚悟での一軒家の購入パターン

甲「遂に貯金が貯まったから念願の都内に一戸建てを一括購入!! ここでみんなで住もう!!」

乙「やったー!!念願の一戸建て! 貯金全額使ったけど嬉しい!!」

しかし不幸にも甲さんが亡くなってしまう。

乙「一戸建てを一括購入したから貯金がないよ!!相続税払えない!!」

シチュエーション2・自宅はあるが貯金を払ったらお金がなくなってしまうパターン

甲「この自宅で住みながらコツコツと貯金をしてきたぞ。これで何かあっても大丈夫だな」

しかし、不幸にも甲さんが亡くなってしまう。

乙「貯金はあるけど、相続税を払ったら自宅しか残らないで生活が出来ないよ!」

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真剣な家族会議のイラスト

こんな感じで、貯金はあっても相続税を払ったらその後の生活費がなくなって困窮してしまう場合や、一軒家の購入のためにお金を使用して相続税を払えなくなるパターンなどあります。

それ以外であっても、生活の基盤である自宅のために多額の相続税を払わせるというのはやはり納税する人にとってはかなり負担があり、相続税本来の趣旨である富の再分配という点からみても疑問が残るものであります。

そんな時のための救世主こそが小規模宅地等の減額特例!

なんと、相続税上の自宅(や店舗や貸家)の価額を最大80%(貸家は50%)減額してくれるという特例なのです!

言葉にするとそのすごさが伝わりにくいですが、自宅が5000万の価値がある場合、そのうちの1000万しか相続税の対象にしないよ、ということです。

すごい簡単に数字で見てみましょう。とりあえず全部相続人は2人という場合で80%減額できる場合で

①自宅5000万円と預金100万円

→小規模宅地無の場合・相続税が90万円発生する

→小規模宅地等有の場合・相続税0円

②自宅6000万円と預金100万円

→小規模宅地等無の場合・相続税が190万円発生

→小規模宅地有の場合・相続税0円

③自宅1億と預金100万円

→小規模宅地無の場合・相続税750万円

→小規模宅地有の場合・相続税0円

とりあえずすごい規定ということは伝わったと思います。

但し、強力な規定の分色々条件があり、一緒に住んでなきゃダメとか亡くなった方が住んでなきゃダメ等の縛りがあります。この辺りの適用関係については、かなり詳しくなるのでまたそのうちの機会に。

但し、その分注意点が多々あり、以下のような点に気を付けなければいけません。

①申告期限までに相続税の申告書を提出

②取得する人を決定しておかなければならない

辺りでしょうか。この規定を知らずに申告書を提出した結果、適用を受けられなかったということもあるので特に注意です。

相続税の中でもトップクラスの優遇措置である小規模宅地等の特例減額。

もし、相続税の申告を税理士に依頼する場合、この規定を知っているかは最低限のポイントになります。少なくとも、この規定を知らない税理士に依頼するのはめちゃくちゃデンジャラスなので注意しましょう。