相続税

相続税法第20条・相次相続控除

相続が発生する状況は、誰か身近な個人が亡くなった時です。

人が亡くなるなんてことはほとんど予測が出来ず、1度目の相続が終わり相続税を納付し終わった後、短期間でその相続人が亡くなってしまうこともあります。

その際、1度目の相続で相続税を支払って、2度目の相続でまた相続税を支払うと、短期間で2度も相続税を払うことになり金銭的に負担は大きいです。

そんな事情を考慮し、相続税法では短期間に連続して相続が発生した場合には、税金負担を軽くする相次相続控除という規定があります。

少しマニアックな規定ですが、今回はそちらの内容について説明しましょう。

目次

1.相次相続控除
2.マイナス出来る総額を求める
3.相続人毎にマイナス出来る金額を求める
4.健康長生きがやっぱり一番
開いたシステム手帳のイラスト

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1.相次相続控除

(相次相続控除)
第二十条 相続(被相続人からの相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により財産を取得した場合において、当該相続(以下この条において「第二次相続」という。)に係る被相続人が第二次相続の開始前十年以内に開始した相続(以下この条において「第一次相続」という。)により財産(当該第一次相続に係る被相続人からの贈与により取得した第二十一条の九第三項の規定の適用を受けた財産を含む。)を取得したことがあるときは、当該被相続人から相続により財産を取得した者については、第十五条から前条までの規定により算出した金額から、当該被相続人が第一次相続により取得した財産(当該第一次相続に係る被相続人からの贈与により取得した第二十一条の九第三項の規定の適用を受けた財産を含む。)につき課せられた相続税額(延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する相続税額を除く。第一号において同じ。)に相当する金額に次の各号に掲げる割合を順次乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。
一 第二次相続に係る被相続人から相続又は遺贈(被相続人からの相続人に対する遺贈を除く。次号において同じ。)により財産を取得したすべての者がこれらの事由により取得した財産の価額(相続税の課税価格に算入される部分に限る。)の合計額の当該被相続人が第一次相続により取得した財産(当該第一次相続に係る被相続人からの贈与により取得した第二十一条の九第三項の規定の適用を受けた財産を含む。)の価額(相続税の課税価格計算の基礎に算入された部分に限る。)から当該財産に係る相続税額を控除した金額に対する割合(当該割合が百分の百を超える場合には、百分の百の割合)
二 第二次相続に係る被相続人から相続により取得した財産の価額(相続税の課税価格に算入される部分に限る。)の第二次相続に係る被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者がこれらの事由により取得した財産の価額(相続税の課税価格に算入される部分に限る。)の合計額に対する割合
三 第一次相続開始の時から第二次相続開始の時までの期間に相当する年数を十年から控除した年数(当該年数が一年未満であるとき又はこれに一年未満の端数があるときは、これを一年とする。)の十年に対する割合

電子政府の総合窓口 イーガブより引用
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000073#F

さて、相続税法に規定されている相次相続控除です。相変わらず文字がたくさんあってよく分からないですね。

簡単に説明すると以下の感じです。

1.相続税を納付した人がその1度目の相続の発生した時から10年以内に亡くなった場合は1度目に納付した相続税の額に応じて2度目の相続税の納付額を軽くするよ。

2.軽くなる相続税の総額は、1度目の相続の際に支払った相続税額を基準にして、経過年数が大きくなるほど少なくなるよ。

3.2番で出した負担の軽くなる相続税の総額を、2度目の相続での財産の取得割合に応じて2度目の相続人達に配分するよ

という感じです。結構複雑な内容なので、簡単に説明しても難しいです。

負担の軽くなる相続税を計算する流れとしては、①マイナス出来る金額の総額を求める②総額を取得割合に応じて配分、という流れになります。

実際は、相続税の計算上含まれた生前に贈与された財産の価額がある場合には、そこを考慮しないとかがあるのですが、細かいので取得割合に応じてマイナス金額を配分という形の理解で大丈夫です。

それでは、実際にどれくらいマイナス出来るの? という内容について解説していきましょう!

平成に作られた書類のイラスト

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2.マイナス出来る総額を求める。

まずは、この規定でマイナス出来る全体の金額を求めます。

この金額は意外と簡単に求められます。前の配偶者控除みたいに複雑なものでなく案外簡単です。

使う数字は、1度目の相続で納付した相続税額と1度目の相続開始日から2度目の相続開始日までに経過した年数の2つ!

計算式としては以下の通り

≪計算式≫

①1度目の相続で納付した相続税額×10-1度目の相続開始日から2度目の相続開始日までに経過した年数/10

算式にすると難しいですね。具体例を見てみましょう

具体例① 1度目の相続で納付した相続税100万 経過年数1年未満

→100万×10-0/10=100万が合計控除額

具体例② 1度目の相続で納付した相続税100万 経過年数1年

→100万×10-1/10=90万が合計控除額

具体例③ 1度目の相続で納付した相続税100万 経過年数2年

→100万×10-2/10=80万が合計控除額

上記のように、1年経過するごとに徐々にマイナス出来る金額が減っていく感覚ですね。

最初は1.0倍で、1年経過するごとに0.9、0.8、0.7と減っていくイメージだと分かりやすいです。

簡単とか言いましたが、解説するのめっちゃ難しくて改めて勉強になりますね!!

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3.相続人毎にマイナス出来る金額を求める。

ここの段階になってくると結構複雑になってきます。

2番で求めたマイナス出来る金額の合計額に、各相続人の取得割合に応じた金額が各相続人のマイナス出来る金額となります。

具体例としては以下の通り

具体例① 2番の金額100万円 相続人の取得割合 Aさん50% Bさん50%

→Aさん控除額100万×50%=50万 Bさん控除額100万×50%=50万

具体例② 2番の金額100万円 相続人の取得割合 Aさん20% Bさん80%

→Aさん控除額100万×20%=20万円 Bさん控除額100万×80%=80万

上記のように取得割合に応じて、配分されます。生前贈与とかあった場合また違ってくるのですが、その辺りはまた細かくなってしまうので割愛します。

そもそも、取得割合が分かるのは相続人全員で誰がどの財産を取得するかの分割協議を終えた後ですので、各相続人のマイナス出来る金額が出せるのは最後の最後、電車で言うなら終点・ターミナルの部分になります。

ですので、まず入り口部分では2番の合計を考慮しておいて、その後色々終わったら3番を考える、という形になりますね。

財産額が変わると各相続人がマイナス出来る金額も変わるため、中々税理士泣かせな規定でもあります。

令和に対応した書類のイラスト

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4.健康長生きがやっぱり一番

1度誰かが亡くなった後に短期間でまた亡くなった場合に適用のあるこの規定ですが、親しい人が短期間で亡くなっている訳で、税金が安くなるからといって喜べるものではありません。

税金が高くなっても安くなっても、やっぱり親しい人には健康に長生きしてほしいものです。

相続税は、単純に税金だけの問題ではなく、各々の人生や背景もあるため非常にデリケートです。改めてそのことを認識し、心に取り留めておきます