相続税

相続税法第18条・相続税額の加算

以前に何度か相続税法の規定を紹介してきましたが、大体が税額の軽減規定でした。

ここで怖くなるのが、じゃあ相続税が増額する規定はないの? ということです。減税制度があるなら増税制度もあるのではないか、知らずに増税制度に引っかかったら予期せぬ相続税の支払が発生することがありますね。

実は相続税にも相続税額が増える規定があります。しかもそれなりに額が増えます。

知らずに行うと、相続税が加算されて多く課さんされてしまいますね!! こまったよ、かぁさーーん!!

目次

1相続税額の加算
2兄弟姉妹、孫、子の妻・夫は要注意
3亡くなる方がよく考えて財産をあげるのが大切
加点方式のイラスト(男性)

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1.相続税額の加算

(相続税額の加算)
第十八条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。
2 前項の一親等の血族には、同項の被相続人の直系卑属が当該被相続人の養子となつている場合を含まないものとする。ただし、当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつている場合は、この限りでない。

電子政府の総合窓口 イーガブより引用
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000073#F

さて、相続税が増額するこの規定はずばり相続税額の加算! そのまんまで分かりやすいですね。

内容もいつもに比べると少なくてスッキリしています。とはいえ、専門用語満載で分かりにくいことは変わりありません。

この内容を簡単に説明すると以下の通り。

①相続や遺言書によって財産を取得した人が、亡くなった人の配偶者、子供、親以外の人の場合には相続税額に20%をプラスして支払ってもらうよ

②でも、子供が既になくなっていて、その亡くなった孫が財産を相続した場合には20%のプラスはなくすよ

③孫が養子縁組して亡くなった人の子供になっている場合には、その孫は20%プラスして払ってもらうよ(上記②の状況の場合は除く)

この規定で大切なのは、誰が取得したら増額されるのかと、いくらぐらい増額されるかです。

いくらぐらい増額されるかについては、一律で20%の増額となります。100万の相続税を支払うなら120万支払わなければならない、という感じですね。

それでは、誰が取得したら上記の20%の増額をされてしまうのかを解説していきましょう。

三兄弟のイラスト

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2.兄弟姉妹、孫、子の妻・夫は要注意

さて、上記の規定で相続税額に20%のプラス支払いをされてしまう人ですが、よくある例として注意しなければいけないのは以下の2パターンでしょうか。

①亡くなった人の兄弟姉妹

②亡くなった人の孫

③亡くなった人の子供の妻・夫等の親族の配偶者

まずは①の兄弟姉妹から

兄弟姉妹が亡くなった人の財産を取得するのはたまにあることで、実は亡くなった人の兄弟姉妹も相続人になれる状況があるんですね。

亡くなった人に子供・両親がいない場合、兄弟姉妹が相続人となり財産を取得する権利が出てきます。亡くなった人に妻・夫がいてもこの場合には兄弟姉妹が相続人になりますね。

この場合、自動的に兄弟姉妹が財産を取得することになるため、予期せぬ財産取得と相続税の納付が発生することになります。

相続税の20%プラスはこの場合でも発生するため、亡くなった人が土地ばっかり持ってたりすると、相続税額負担が物凄く高くなり支払いに困ることも多々。

こういった状況があることから、亡くなった人に配偶者がいる場合には配偶者が全て取得して相続税の負担を抑える、という分割も考えられます。配偶者軽減もありますからね。

次に②の孫

亡くなった人の子供がまだ存命で、その子供の子、つまり孫に財産をあげるには遺言書に記載しなければいけません。

特別可愛がった孫や世話してくれた孫に財産をあげたい、というのは多々あることなので遺言書を作成して特別にあげるというパターンはよくあります。

しかしこの場合でも孫が支払うべき相続税については20%のプラスがされてしまうため、何の考えもなしに遺言書を作成しては逆に孫を困らせかねません。

このパターンについては生前に遺言書を作成しなければ発生しない都合上、亡くなる人がよく考えて作成をする必要があります。相続税の試算を税理士に依頼するなどし、無理なく相続税額を支払えるような遺言を作成する必要があるでしょう。

じゃあ孫を養子縁組して子供にしちゃえばいいじゃん!! って考えもでそうですね。

ダメなんです。孫だけは特別に養子縁組しても20%加算の対象にするよ~って言われてるんですね。

趣旨としては、子供の世代を飛ばして孫世代に財産をあげる訳なので、1回分相続税の支払いがない分大目に取るよ、というものです。

最後に③の子供の妻・夫などの親族の配偶者

子供の妻・夫といった嫁夫姑舅の関係の場合でも②と同じように遺言書を作成しなければ財産を直接上げることは出来ません。

生前によくしてくれた、世話になった、仲が良かった子供の配偶者に財産をあげたいというの話も少なくありません。介護をしてもらったケース等もあります。

この場合でも、相続税に20%のプラスがされてしまうことになります。子供にあげれば20%のプラスはありませんが、心情的に直接あげたいという場面もあるでしょう。

こちらの場合でも遺言書を作成しなければ発生しない状況のため、亡くなる人がよく考えて遺言書を作成する必要があります。それこそ財産をもらった人が困らないようによく考える必要がありますね。

ちなみに、③の場合で子供の配偶者を養子とした場合には20%のプラスはなくなります。

ですので、子供の配偶者を養子とするのも1つの手段だったりします。そうすれば遺言書の作成に関係なく財産をもらう権利も獲得することが出来ます。流石に養子が絡む問題なのでお互いの心情的にも一考を値するものではありますが。

家系図のイラスト

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3.亡くなる方がよく考えて財産をあげるのが大切

20%のプラスがされるケースはいくつかありますが、やはり一番大切なのは亡くなる人が誰に何をあげるかよく考えることでしょうか。

上記の②、③については、遺言書を作成しなければ発生しない状況であるため、亡くなる方が相続税の支払いに困らないかまで考えて作成するのがかなり大切になってきます。

この状況でなくても、遺言書が残っていれば相続人の心理的負担は軽減されるため、事前にしっかりと準備しておくことが大切です。

税金は加算させないためにはきちんとコミュニケーションを取って相談することが大切ですね。

コミュニケーションを取って余分な税金は課さんぞ!! 加算は課さんぞ!!

ちなみに実は米国にもGeneration-skipping transfer taxというこの規定に似たものがあり、1世代飛ばして相続させたら追加で税額を支払う必要があります。

改めて、Generation-skipping transfer taxって内容がめっちゃ分かりやすい名前ですね。