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結婚に伴って想定される税金関係の規定とは?

辞める時も健やかなる時も、独身とは異なる税制がそこに

人生の岐路の1つとなる結婚。色んな事情が複雑に重なりあい、一歩踏み出しにくい方も多いのではないでしょうか。

変わるのは人生だけではなく、税金を取り巻く状況も……そんな訳で今回は、結婚に関する税金関連の規定をまとめました。

ライフプランを考える際に参考にしていただければ幸いです。

婚約時

結婚を行う際に行う儀礼的なものの1つとして挙げられるのが「結婚指輪」。

結婚指輪は給料の3ヶ月分の金額のものを……というワードが何となく耳に残っているのですが、どこかのキャッチコピーだったのでしょうか。

そんな結婚指輪で考えられる税金的な検討事項といえば、贈与税。

夫婦で結婚指輪を共同購入した場合には贈与税を全く考える必要はありません。

しかし、男性女性どちらか片方のみ金額を負担し、パートナーに贈答した場合、贈与の行為が発生することになります。

贈与が発生すれば、当然、贈与税を考慮する必要がありますが。

贈与税は発生しないでしょう。

贈与税では非課税のものが定められており、祝物やお見舞い品等といったもので、社会通念上妥当と思われるものには贈与税はかからないとされています。

結婚指輪を直接指定はされていませんが、祝物で社会通念上妥当でしょう、という見解です。

但し、あまりにも高額すぎるものの場合には、覆ることがあるのでご注意を

結婚式

結婚式では、結婚のお祝いとしてご祝儀を渡していただけます。

って、色んな方からご祝儀もらってしまっているのですが、税金を検討する必要はないのでしょうか?

お金をもらっているので贈与に該当するのですが

こちらについても、先程の結婚指輪と同様、祝物で社会通念上妥当なものですので、贈与税は非課税となります。

存分に包んで祝福しましょう。

結婚生活~新婚時代~

概要

結婚生活を行う上では、独身と結婚相手がいる場合とでは、以下の税額軽減規定が検討出来ます。

所得税・住民税の軽減規定

  1. 配偶者控除
  2. 配偶者特別控除
  3. 事業専従者給与・青色事業専従者給与

1番と2番については、全ての人が検討し、3番については個人事業主の方が検討出来ますね。

配偶者控除

夫婦どちらかのパート収入が103万(個人事業主等は38万円)以下ならば、もう片方が支払う所得税・住民税が安くなるというものです。

所謂103万の壁。

住民税の場合には100万の壁になったりします。地方自治体によって金額が変わるので要注意。100万しかパート年収を得てなくても、住民税は発生する、ということも。

ちなみに、令和2年からお給料に対する所得税を減らす、給与所得控除というものが引き下げられましたが、配偶者控除等の判定金額が引き上げられているので、103万の壁は変わらずなので安心。

また、会社員の場合には「給与所得者の配偶者控除等申告書」を年末調整時に記入することになります。

配偶者特別控除

配偶者控除だけでは、103万を超えて働けない制限を撤廃するために、最近新たに設けられた軽減規定。パート年収が150万円(個人事業主の場合には純利益95万)以下ならば、先程の配偶者控除と同額分の税金が安くなります。

その後は、収入が上がる毎に段々と税金の安くなる金額が減っていき、パート年収約201万以降は適用が出来なくなります。

ここで注意したいのが、これで安くなるのはあくまでもパート収入を得た相手パートナーであって、パートをしている本人には何ら影響がないこと。

パート年収で150万を稼いだ場合、そのパートさんには「所得税・住民税・社会保険料」などは通常通り発生します。(社会保険については勤務先の状況にもよりますが)

相手の税金が下がっても、パート収入者の税金には影響しないので注意です。

事業専従者給与・青色事業専従者給与

こちらは個人事業主専用の規定。

結婚相手に対して、自分のやっている事業のお給料を支払うことが出来ます。

だからどーした、と言わんばかりですが、お給料は経費になりますので、個人事業主側の純利益を減らすことにより税金負担を軽減することが出来ます。

そもそも、「特に関係のない第3者に対して支払う給料も経費になる」ので、結婚相手に対して支払うお給料が経費になることが、優遇措置なのかは微妙ですが、同じ世帯内で税負担を平準化出来ると考えると優遇措置に該当するのでしょうか。

支払ったお給料は結婚相手側の収入金額として税金が課されるので注意。結婚相手が他にパート等で収入を得ている場合には合算して税負担が行われることになります。

但しその代償として、先述の配偶者控除・配偶者特別控除は適用できなくなるので注意。

場合によっては、こちらを使用しない方がいい場合も

ちなみに、配偶者の税金関係で紹介しましたが、別に子供でも父母でも使えます。

米国では

米国では、夫婦の場合、夫婦の収入を合算した金額で確定申告することが出来ます。

米国でも超過累進税率ですが、1人1人で申告するよりも少し安くなります。

結婚生活~20年目~

同じ相手と婚姻期間が20年以上になる場合には、贈与税の配偶者控除が使用できるようになります。

内容としては、自宅(敷地も)を配偶者に2,000万円まで非課税で贈与できるというもの。

例えば、熟年離婚を危惧する相手に、自宅の持分を一緒にすることで精神的な安心を与えること等が出来ますね。

他では、相続税対策で使用されることが多いです。自宅の持分を減らすことで、相続時の評価対象を減らすことが出来ます。

但し、結婚相手に対する相続税対策という観点では、相続時の方がもっと手厚い優遇措置があるので、どちらかというと子供等の相続税負担を軽減するという面が大きいのではないでしょうか。

この辺りは、2次シミュレーション等にも関わってくることなので、ご利用は計画的に。

私の事務所でも、2次シミュレーションを踏まえて相続税額の試算も行っているため、気になる方は是非ご依頼下さい。

米国では

米国では、結婚相手にはどんだけ贈与しても贈与税はかかりません。すごいですね

死が2人を分かつまで

概要

結婚相手と死により分かつことになった場合には、以下の減税が検討出来ます。

贈与税の減税

  • お香典の非課税

相続税の減税

  • 結婚相手は相続人になれる
  • 結婚相手は1億6,000万までは遺産を取得しても相続税0円
  • 自宅の土地の課税対象額が最大8割減
  • 自宅を他の人が取得しても、専用の居住権を取得可能

贈与税の減税

お香典の非課税

ご祝儀と同じように、お香典についても非課税となります。相続税上も考慮する必要はありません。

相続税の減税

結婚相手は相続人になれる

そもそも一番大事なこととして、血が全く繋がっておらず養子じゃない場合に、相続人になれるのは結婚相手しかいません。

内縁関係といった場合には、遺言がなければ遺産を取得する権利がないので注意しましょう。

結婚相手は1億6,000万までは遺産を取得しても相続税0円

結婚相手は、亡くなった結婚相手の遺産を取得しても1億6,000万円までは相続税は0円となります。但し、申告書の提出は必要となるので注意。

将来的に自分も亡くなり、子供への相続が発生した場合のトータル相続税額まで考える場合には、緻密な2次シミュレーションが必要となります。

自宅の土地の課税対象額が最大8割減

亡くなった結婚相手が住んでいた自宅について取得した場合には、その土地の相続税の課税額を最大8割減することが出来ます。

先程の1億6,000万まで相続税0円と合わせて、かなり高い金額まで、結婚相手が取得する財産については0円とすることが出来ます。

自宅を他の人が取得しても、専用の居住権を取得可能

最近できた新しい規定ですね。自宅は子供がもらうけど、そこに住む権利を結婚相手が別個に取得することが出来ます。

勝手に売られたり家賃を請求されたりといったことを回避出来ます。他にも、2次相続時の税額を減らすという面もあります。

米国では

結婚相手はいくら遺産を取得しても相続税はかからないらしいです。すごいですね。

結婚は税金ではない

相続時以外はそこまで手厚い優遇がないことが分かります。

結婚は税金ではなくて、好きな相手と行いましょう。

このページの執筆者

立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史

※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。