特定種じゃないネコは雑種ネコ!
持続化給付金自体の声は落ち着いてきた印象がある今日この頃(入金時期等で、色んな声をお聞きする機会はまだまだありますが)ですが、それに派生して新たな声が挙がってきました。
雑所得フリーランスも持続化給付金の対象にしてほしい!
今回の持続化給付金では、「事業所得がある方」のみが対象であり、「雑所得で申告している方」については、どんなに売上が減少していようと、対象外となっています。
所得区分的には事業所得に該当しているにも関わらず、雑所得として申告をしてしまっていたことにより給付金が受けられなかった方々が多数いらっしゃるとのこと。
所得区分の違いがあれど、その方々も新型コロナウィルスの影響により厳しい状況に立たされてしまっていることから、事業所得者同様に給付金による補償を求めている
そのような声が挙がっているとこのことです。
それでは、そもそも、雑所得とは一体なんなのでしょうか。
Contents
雑所得とは
概要
雑所得とは、雑所得以外の所得区分のどれにも当てはまらない所得のことを言います。
いわゆる、どの区分にもふさわしくない所得を受け止める受け皿的な存在です。
全所得区分中で唯一、「〇〇に該当したら雑所得!」ではなく「該当しなければ雑所得」という消極的な判断基準を取っている所得です。
所得区分
概要
前述の通り、雑所得か否かを判断するには
雑所得の要件ではなく、他9つの所得区分を理解しなければいけません。
どれかに該当すれば雑所得ではない、ということは、どれにも該当しないことを検討しなければいけません。
それぞれ1行でざっくり解説していきます
利子所得
銀行・信用金庫等の金融機関の預金利子
配当所得
有価証券の配当
不動産所得
不動産収入
事業所得
事業から生じる収入
給与所得
お給料収入(サラリーマン等)
退職所得
退職金
山林所得
木を売ったり切ったりした際の収入
譲渡所得
物を売った際の収入(事業所得等に該当する場合を除く)
一時所得
上記8区分に該当せず、一時的にもらったもの(営利目的ではない行為)
副業→雑所得ですが、雑所得→副業ではない
副業は雑所得
という情報が先行し、雑所得は副業という認識が多く広まっている印象がありますが、上記の通り、そういう訳ではありません。
事業所得に該当しない業務(事業的規模じゃない仕事)は、上記9つの所得区分のどれにも当てはまらないため、結果的に雑所得に該当となります。
他の雑所得の例
年金
税金の還付加算金
FX収入
仮想通貨の利益
転売収入
フリマアプリによる収入
先物取引
などなど。
ざっとあげるだけでもこれだけの数があります。
「本業なのに雑所得」が発生したプロセス
どうして、事業から生じた収入が雑所得に該当してしまったのでしょうか。
1つ1つの所得区分に当てはめてプロセスを確認していきましょう。
- 利子・配当・不動産収入ではない
- 事業的規模ではない・帳簿を作成していない等の理由から事業所得ではない
- お給料でも退職金でも、木を伐採している訳でもない
- 譲渡所得に該当する譲渡をしていない
- 営利目的で行っているため一時所得ではない
上記の中で、特に②の「様々な理由から事業所得に該当しない」ことが理由で、雑所得に該当してしまったケースが非常に多いです。
事業所得に該当しなかった理由
明確化理由・帳簿書類を作成していない、領収書等を保管していない
所得税法では、事業者は帳簿書類を作成し、その作成に用いた領収書等を保存する義務があります。
例えば、
- 現金の入出金を記録する現金出納帳
- パソコン等の固定資産を管理する固定資産台帳
- 日々の必要経費を記録する経費帳
- 日々の売上を記録する売上帳
上記の帳簿等を全然作成していない、というのであれば
事業者は帳簿書類を作成し、その作成に用いた領収書等を保存する義務を満たしていない
ため、当然ながら事業所得に該当せず、雑所得に該当します。
これは、所得税法で明確に規定されている最低条件となります。
明確でない理由・事業的規模じゃない
事業所得は、「事業から生じる所得」と明記されていることから、その業務が事業に該当する必要があります。
但し、この事業というのは明確に法律では決まっておらず、客観的に様々な事情を勘案して決定されるものとなります。
これは明文化されていないため、納税者自身の判断によることになりますが、参考として以下の事例に該当することが挙げられます
- 反復・独立・継続していること(本来は消費税から見た事業の定義ですが…)
- 営利性・有償性を確保している
- 自己の危険と計算における企画遂行性が認められる
- 設備等による投資がある
- 精神的肉体的労務の投入
- その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に判断
誤解を恐れずにざっくりと言うと、
その収入だけで生活がしていけるのかorしていく予定なのか
という点が1つのポイントになります。
例えば、企業に勤めている正社員が、土日だけ趣味で作成した服を売っていても、その服の売買をやめたとしても正社員としての収入で生きていけるため、事業所得とはならない可能性が極めて高いです。
所得税は、申告納税方式という納税者の判断を尊重する方法が採用されている
日本での所得税は、申告納税方式という方法が採用されています。
申告納税方式とは、国税庁のHPでは以下のように示されています(抜粋)
この申告納税制度は、納税者自らが税法を正しく理解し、その税法に従って正しい申告と納税をするという極めて民主的な制度である。申告納税制度の下にあっては、その納税者のする申告により第一次的に納税義務が確定し、納税者の申告がない場合又はその申告が正しくない場合には、税務署長がこれを是正する更正又は決定により第二次的に納税義務が確定することとしており、この申告納税制度を担保するために、青色申告制度や各種の加算税制度及び租税罰則制度等が設けられ、適切な税務調査の実施と的確な資料情報の収集及び提供によって、申告納税の適正さが確保されることを予定している。
国税庁HPより https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/32/230/hajimeni.htm
基本的に、納税者が判断した申告を尊重するし
明確な間違い以外については、それを納税者の判断と受け取るスタンス
を取っています。
今回の、「本業なのに雑所得」という問題についても、
基本的には「納税者が雑所得(=事業所得に該当しない)と判断した」ということになります。
そのため、納税者自身が正しい納税知識を持っていないといけません。
とはいえ、複雑な税法を本業の他に理解するのは難しい
私は、業界でもとても珍しい個人特化の税理士事務所を立ち上げております。
正しい知識を持って、適正な税負担を
という理念を掲げております。この理念を掲げるようになった理由は上記のように
税法のルールを知らず(又は間違った指導を受けて)必要以上の税金を払っている同年代を数多く見てきたためです
私はまだ20代の税理士であるため、同年代の相談に乗る事が多いのですが
- 複雑化している税法を把握しきれずに多額の税金を納めている
- 知らない故に、1枚の紙を提出していないだけで税金がかなり高くなる
- 高年齢者が多い税理士業界相手に相談するのは敷居が高い・相談しても無碍に扱われる出来事があった
などの出来事は数えきれない程見てきました。
税法は基本的に税負担が公正になるように出来ています
しかし、誤解を恐れずに言うと、それは税法を知っている方に対してだけで
無知と怠け者からは多くの税金を取るように出来ております。
今まで雑所得で申告してきた方の場合、新しく事業所得で申告するに伴い、様々な検討事項が発生します。
今後、同じように損しないように、もしよろしければご相談だけでもお願い致します。