こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。
法人は青色申告の承認の取消について比較的厳しめの印象があります。
そのうちの1つが「帳簿書類の備付け等が行われていないこと」。
それでは、この取消に係る参考になる裁決事例を見てみましょう。
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
Contents
青色申告の承認の取消とは?
青色申告は一度承認を受ければその後、無条件でずっと受けることが出来るのではなく、一定の要件に該当しない場合にはその承認を取り消されて白色申告になるケースがあります。
その要件の1つとして、帳簿書類を備え付けていなかったことが挙げられます。
税理士に任せていて書類の作成保存はしていたが担当者が認識していなかった裁決
税理士が帳簿書類を作成していれば大丈夫、そう考えている方も多いと思います。しかし、担当者が帳簿書類を全く認識していないのは良いこととは言えません。
実際に、税理士に帳簿作成を任せて、担当者が認識していなかった場合に争った裁決事例があります。
出典:国税不服審判所ホームページ(令和2年9月14日裁決・争点番号301403000)
なお、裁決事例集には登載されておりません。
令和2年9月14日裁決・帳簿書類の保存について争った裁決事例
請求人の主張
自分は、税務代理人の税理士に帳簿の作成を任せていたことから、税務調査において原処分庁(税務署側)の担当者に対してどの帳簿を提示すれば良いか分からなかったうえ、どれを提示するのかの説明もなかった。
また、税理士を通じて原処分庁に対して総勘定元帳を提示したのだから、帳簿の備付け、記録又は保存はされていたといえ、青色申告の承認の取消自由には該当しない。
原処分庁(税務署側)の主張
帳簿書類の備付け、記録又は保存の規定は、税務調査において適時に帳簿書類を提示することが出来るように態勢を整えて帳簿書類を保存しなかった場合には、「帳簿書類の備付け等が行われていたこと」に該当しない。
また、原処分庁が請求人に対して再三にわたり、帳簿書類の提示がなければ青色申告の承認の取消自由に該当する旨を伝えていた。それにも関わらず提示しなかった。
税理士から提示を受けた総勘定元帳についても、税務調査担当者が税理士に対して質問検査権の行使に基づいて受けたもの。
よって、税務調査にあたり、適時に帳簿書類を提示することが可能なように態勢を整えて帳簿を保存していたとは認められず、青色申告の承認の取消自由に該当する。
結論
棄却(取消自由に該当する。)。
争点のポイント
代表者が検査に対して適時に帳簿書類を提示出来る態勢があって初めて「帳簿書類の保存」
青色申告の承認の取消の規定では、帳簿を作成して保存してあっても、「適時に帳簿書類を提示出来る態勢」がなければ、帳簿を備え付けているとは言えないとのこと。
きちんと作成帳簿書類の内容を理解し、保存場所を把握し、求められた際に提出が出来て初めて、帳簿書類の保存等があったと認められるのですね。
税理士がただ単に帳簿書類を作りっぱなし、では保存に該当しない
今回の裁決では、税理士がきちんと帳簿書類を作成していたにもかかわらず、帳簿書類の備付けが認められませんでした。
税理士だけが分かっていればそれで良い、ということではないことが分かります。
会社側の担当者自身がきっちりと帳簿書類を認識して初めて、保存に該当する
かの有名なシュレディンガーのネコにおいても、観測者が観測を行うことで初めてその事実が発生し、結果が確定するという考え方があります。
きちんと認識していなければ、そこには存在しないも同然なんですね。
まとめ
・担当者が適時に帳簿書類を提示出来る態勢となり、初めて備付け等に該当する。
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
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このページの執筆者
立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。