こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。
土地や建物等を売却した場合、譲渡所得という変わった取扱いの税額計算を行うことになります。所謂、資産税業務とも呼ばれますね。
利益に対して課税を行うという根底のところは同じなのですが、他の所得計算とは少し異なる専門的な分野の範囲でもあります。
譲渡所得の計算上ポイントのなるものの1つが、譲渡経費の算定。
今回は、根抵当権抹消費用が譲渡経費に該当するか否かで争った裁決事例を見ていきます。
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
Contents
根抵当権とは?
根抵当権とは、不動産の担保価値を算出して、貸し出せる上限を定めることにより、その範囲内でお金を借りたり返済できるものをいいます。
直接的な債務という訳ではありません。相続税の計算上控除出来ませんし、消したからといって経済的な利益も生じません。
不動産を売却する際などは、この根抵当権を抹消する手続きが必要になり、その抹消の際には費用が発生します。
それでは、この抹消費用は譲渡に必要な経費として、譲渡所得の計算上経費に算入することが出来るのでしょうか。
この根抵当権の抹消費用が譲渡所得の計算上、譲渡経費に該当するか否かで争った裁決事例を紹介します。
根抵当権の抹消費用が譲渡経費に該当するか否かで争った裁決事例
出典:国税不服審判所ホームページ(令和2年12月15日裁決・争点番号201305020)
なお、裁決事例集には登載されておりません。
令和2年12月15日裁決・根抵当権抹消費用が譲渡経費に該当するか否かで争った裁決事例
請求人(個人側)の主張
土地建物等の譲渡に要した根抵当権抹消登記費用は、その支払根拠が契約書等で明らかで支払の事実は存在する。
支払の事実が存在する以上、譲渡所得の金額の計算上控除するべき、譲渡に要した費用として認めるべきである。
原処分庁(税務署側)の主張
譲渡所得の計算上控除出来る譲渡経費は、譲渡の為に通常必要となる直接の費用又は譲渡価額を増加させるための費用である。
一般に、根抵当権抹消手続は、根抵当権設定契約の解除に付随し、根抵当権が消滅したことを明らかにするために行われるものである。
譲渡のために直接かつ通常必要な費用ではないし、譲渡価額を増加するものには該当しない。
よって、経費として控除することは出来ない。
結論
棄却(経費として控除することは出来ない。)
本件裁決事例のポイント
譲渡経費は、譲渡のために直接かつ通常必要な費用又は譲渡価額を増加させるもの
譲渡経費として控除することが出来るのは、所得税法第33条(譲渡所得)第3項の規定を根拠とし、譲渡のために直接かつ通常必要な費用又は譲渡価額を増加させるものとされています。
今回の抵当権抹消費用は、上記の理由に該当しない、ということになりますね。
根抵当権抹消手続は、根抵当権設定契約の解除に付随して行われるもの
根抵当権抹消手続は、この設定契約の解除に付随して行われるものであって、それの抹消費用は譲渡のために必要な経費には該当しないとのこと。
契約解除と、譲渡のために要したかは別物で、直接必要な費用には該当しないということですね。
また、根抵当権は全ての不動産に設定されている訳ではないため、譲渡不動産にたまたま根抵当権が設定されていたとすると、通常必要な費用にも該当しないという判断にも思えます。
上記のような理由から、根抵当権抹消費用は譲渡経費には該当しない判断になったのですね。
資産税は特殊で専門的な分野。専門的な税理士に相談をしましょう
譲渡所得は資産税と呼ばれる専門的な分野に該当します。上記の経費の算定の他、特例の適用有無まで把握していないと遂行は難しい内容になります。
専門的な分野であるからこそ、過度な税額を払う可能性の高い資産税分野。
相談する際は、資産税に対して専門的な知識を持っている税理士に相談をしましょう。
まとめ
・譲渡に直接かつ通常必要な費用ではないため、譲渡経費には該当しない
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
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このページの執筆者
立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。