裁決事例紹介

五千万円の貸付金に係る業務が事業所得に該当するか否かで争った裁決事例【個人事業主・確定申告】

ジャガーネコ
ジャガーネコ
所得税法には、収入等の性質によって10個の所得区分が設けられているんだよ。
ミケ君
ミケ君
10個もあると、どれに該当するか分からなくなっちゃうかもね。
ジャガーネコ
ジャガーネコ
最近では事業所得・雑所得の区分が話題にあがるね。区分で争った裁決事例を確認していこう!

こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。

働き方改革が叫ばれる今日。かつては副業禁止の世の中だったのが、副業解禁の流れになってきていますね。

副業に限らず、フリーランス等が自ら業務を行い収入等を得た場合には状況によっても異なりますが確定申告が必要となります。

ここで問題になるのが、その収入等は確定申告時にどの所得区分で計算を行えば良いのかということ。

今回は、貸付に係るものが事業所得に該当するか否かで争った裁決事例を紹介します。

所得区分については、以下の記事で詳しく紹介していますので良ければ併せてどうぞ。

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。

しばしば問題になりがちな事業所得

事業所得の意義

事業所得とは、農業、漁業、サービス業やその他の事業を営んでいるその事業から生ずる所得をいいます。

大切な点として「事業」から生ずる所得が該当するものが事業所得に該当します。

ざっくりいうと、ある程度の規模感や事業としてやっていく気持ちがないと事業には該当しません。

事業に該当するかの要件は、法律では定められていない

事業に該当すれば事業所得。

しかし、この事業というのが非常に曲者で、実は法律等で明確に定められているところではないんですね。

納税者の判断や客観的な事実に基づいての判断になるため、争点になることもしばしばあります。

今回は、事業所得に該当するか否かで争った裁決事例について確認していきます。

五千万円の貸付が事業所得か否かで争った裁決事例

出典:国税不服審判所ホームページ(令和2年12月14日裁決・争点番号200904990)

なお、裁決事例集には登載されておりません。

令和2年12月14日裁決・五千万円の貸付が事業所得か否かで争った裁決事例

請求人(納税者側)の主張

第三者に対して行った五千万円(50,000,000円)の貸付は、所得税法第27条第1項(事業所得)に規定する事業に該当する。

よって、この貸付に係る内容は事業所得に該当する。

原処分庁(税務署側)の主張

本件貸付に係る借用書には、貸付金に係る利息を無利息とする旨が規定されている。

実際に、請求人に対して本件貸付の元本・利息の返済・支払はされていないと認められる。

これらの理由から、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務である事業として、本件貸付けを行っていたとはいえない。

よって、事業所得には該当しない。

結論

棄却(事業所得には該当しない。)。

本裁決のポイント

そもそも収入を得る気がなかったし、実際に受け取ってもいなかった

五千円の貸付。金額面で見ればかなり大きな規模の貸付金でしたが、事業所得には該当しないという判断でした。

本裁決のポイントとして個人的に思うのは、借用書に利息を無利息とし、実際に元本含め受け取っていなかったこと。

お金は貸すが、利息は無利息。この借用書等から、「本件貸付から収入を得る気はない」という請求人のスタンスが見えてきます。

また、実際に受け取っていないことからも、そのスタンスを裏付ける実証にもなっています。

これらのことから、以下のような点が客観的に見えてきます。

  • 自己の計算と危険において営まれたものではない(ある種のボランティア?)
  • 有償性を有していない
  • 反復継続して遂行する意思と社会的地位が客観的に認められない

上記のような理由から、五千万円という高額の貸付であっても、事業所得には該当しないという裁決結果となりました。

ところで、貸金業を営むには登録等が必要なのでは?

今回の本裁決とは関係ありませんが、貸金業を営むには、貸金業の登録や貸金業務取扱主任者の資格、その他の要件等が必要になります。

本裁決の請求人が上記のような手続きや資格取得をしていたかは定かではありませんが、もし貸金業の場合には上記のような手続き等を行っているかも判断の1つになりそうですね。登録していなかったら税金以前にそもそも違法業者に該当してしまうと思いますが。

事業所得に該当するか否かは大きな問題になってきている

働き方改革が叫ばれる今日。以前より副業のワードを目にすることが多くなってきました。

収入を得れば当然税金も関わってきます。自分で事業を行いやすくなってきたからこそ、これらの問題に自分がまきこまれる可能性も以前より高くなったといえます。

知らなかったでは済まされない訳ですし、何か始めようと思った際は、税理士さん等に相談しましょう。

まとめ

五千万円の貸付が事業所得に該当するかの裁決事例のまとめ

・収入を得る気がなかったこと等の理由から、事業所得に該当しない

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。

このページの執筆者

立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史

※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。