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【確定申告】相続税の取得費加算の「資産」の単位は、資産の種類に留まらず個別の譲渡資産ごとに計算するとした事例

ジャガーネコ
ジャガーネコ
相続で取得した資産を一定期間内に譲渡した場合には、資産に発生した相続税のうち一定額を資産の取得費に加算出来るんだよ!
ミケ君
ミケ君
資産……つまり、取得した資産全ての相続税を取得費加算に!?
ジャガーネコ
ジャガーネコ
拡大すぎる。

こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。

早いもので今年も終わりが近づいてきていますね。

ついこの間確定申告を行っていたと思いきやもう既にかなり昔の……思うほど昔でもないですね。時が経過するのは早い。

確定申告の中でも譲渡所得の場合、その譲渡に係る税金については、年末を待たずにある程度検討することが出来ます。

譲渡を行う背景の1つとしてあるのが、相続により取得した財産の譲渡。

相続により取得した財産を譲渡した場合には、いくつか特例がありますが、今回はそのうち相続税の取得費加算について確認していきます。

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。

相続により取得した財産を譲渡した場合の特例

相続税の取得費加算により、発生した相続税の一部を取得費に加算することが出来る

相続により財産を取得した場合で、一定の場合には相続税を納める義務が生じます。

相続により取得した財産については、特に使用する気がなく、持っていても仕方がないので譲渡するという財産と対面することも少なくはないかと思います。

その場合、その財産を相続する際に相続税を負担し、その財産を譲渡する際に所得税(譲渡所得)が発生します。

ちょっと税金発生しすぎじゃないか!何てことも感じるのではないでしょうか。

相続税と所得税(譲渡所得)はそもそも、その税目の趣旨が異なるため、一概に並列で検討することはあまりよくはないのですが、感情的には分からないこともありません。

そこで、相続により取得した財産を一定期間中に譲渡した場合には、相続税の一部を取得費に加算することが出来ます。

具体的には、その者が負担した相続税のうち、その資産に係る相続税部分が取得費として加算することが出来ます。

……資産?

この資産の単位ってどれだけの範囲なんでしょうか。

譲渡をした「資産」毎にとあるけど、この資産の単位はどれだけのもの!?

一口に「資産」といったも、その単位はいくつか考えられます。

「土地」「建物」「有価証券」といった、大きな単位毎も資産。

「種類」「銘柄」といった、上記の単位をさらに細分化した単位も資産。

それでは、相続税の取得費加算で検討する資産の種類はどこにあるのでしょうか。

今回は参考に、相続税の取得費加算で検討する資産の単位で争った裁決事例を紹介します。

出典

相続税の取得費加算の資産の単位で争った裁決事例

出典:国税不服審判所ホームページ(令和3年9月30日裁決・争点番号202714000)

なお、裁決事例集には登載されておりません。

令和3年9月30日裁決・相続税の取得費加算の「資産」の単位で争った裁決事例

請求人(納税者側)の主張

私は、相続により取得した財産のうち、有価証券を譲渡した。この有価証券の譲渡に係る相続税の取得費加算については、各銘柄に対応する相続税だけでなく、有価証券全体の相続税を取得費加算に適用するべきではないか。

租税特別措置法第39条第1項に規定する《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》の規定により取得費に加算する金額については、同条第8項が譲渡をした「資産」毎に計算すると定めている。

この「資産」というのは、「株式」や「不動産」といった資産の単位毎に定めていると考えられる。

そのため、今回譲渡した有価証券に係る相続税の取得費加算については、「有価証券」全体を単位として考えるべきである。

原処分庁(税務署側)の主張

今回の譲渡に係る有価証券の取得費加算については、銘柄ごとに検討を行うべきである。

所得税法その他関係法令は、譲渡所得の基因となった資産が有価証券である場合、その種類や銘柄が異なれば別個の「資産」であることを前提としている。

上記の相続税の取得費加算のみ、別個の資産の単位と考えるとは認められていない。

そのため、相続税の取得費加算を行う際には、銘柄や種類毎を「資産」の単位とし、種類や銘柄毎に相続税の取得費加算を適用するべきである。

結論

棄却(種類や銘柄毎に相続税の取得費加算を適用する。)

本裁決のポイント

「資産」の単位は、「建物」や「有価証券」といった広い単位ではなく、種類や銘柄で確認する

今回のポイントとして、「資産」の単位をどこに定義するかでした。

納税者側は、「資産」とは大きな括りの資産の種類毎に定義するのに対し、原処分庁側は、「資産」とは種類や銘柄毎に区分するという考えでした。

今回は、所得税法やその他の関係法令での考え方を考慮し、有価証券については、種類が銘柄が異なれば別個の資産として扱うとし、資産の単位については、種類や銘柄毎という結論となりました。

直感としては、それはそうだろうという感覚ではありますが、実は過去には大きな括り毎にやっていたことも……?

ひと昔前は、土地については「土地」を単位としていた時期もありましたね

ひと昔前、相続税の取得費加算のうち、土地の譲渡については、譲渡した土地に係る相続税だけでなく、土地全体の相続税を取得費加算としていました。

しかし、平成26年度の改正で、上記については廃止されて、土地の種類毎の取得費加算となっています。

こうして、過去には実は全体で考慮していた事例もあると考えると、あながち間違いという考え方ではないのかもしれません。

税法を跨いで考えていく

相続税の取得費加算は、相続税と所得税という税法を跨いだ考えになります。

1つの税法だけに縛られるのではなく、税法を跨いで色々なことを考える。

難しいけど面白いところでもあります。

1つだけに囚われず、色々なところを俯瞰して確認してみましょう!

まとめ

相続税の取得費加算の単位のまとめ

・有価証券については、種類や銘柄毎に計算を行う

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。

このページの執筆者

立川のネコ好き税理士 藤本悟史

※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。