実録!! 生命保険金目当ての殺人事件!!
――この事件、何かにおう
長いコートを着た刑事があごをしゃくらせて唸る。
この事件何かがおかしい。この被害者はこの事件の約1年前に生命保険にかなりの数に加入している。そして、時期を見計らったかのような事故……これは、まさか生命保険金殺人事件⁉
……見えたぞ、この事件。
すぐに相続税の申告書第9表を調べろ! 未分割であろうとここは固定のはずだ! 当たるぞ!
刑事は保険金受取人を事情聴取。受取人は、素直に応じたのであった……。
目次
1.生命保険金等 2.どんなのが相続税の課税? 3.その他の効用 4.終わりにーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1.生命保険金等
相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)
電子政府の総合窓口 イーガブより引用
第三条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人(相続を放棄した者及び相続権を失つた者を含まない。第十五条、第十六条、第十九条の二第一項、第十九条の三第一項、第十九条の四第一項及び第六十三条の場合並びに「第十五条第二項に規定する相続人の数」という場合を除き、以下同じ。)であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。
一 被相続人の死亡により相続人その他の者が生命保険契約(保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第三項(定義)に規定する生命保険会社と締結した保険契約(これに類する共済に係る契約を含む。以下同じ。)その他の政令で定める契約をいう。以下同じ。)の保険金(共済金を含む。以下同じ。)又は損害保険契約(同条第四項に規定する損害保険会社と締結した保険契約その他の政令で定める契約をいう。以下同じ。)の保険金(偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われるものに限る。)を取得した場合においては、当該保険金受取人(共済金受取人を含む。以下同じ。)について、当該保険金(次号に掲げる給与及び第五号又は第六号に掲げる権利に該当するものを除く。)のうち被相続人が負担した保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
二 被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)で被相続人の死亡後三年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000073#53
今回の相続税・DE・条文見ちゃうよコースは生命保険金(と退職手当金)です。
かっこ書きで退職手当金も書いてありますが、扱いは大体一緒なので生命保険のことを考えていればとりあえずは大丈夫です。他にも個人年金とか会社からの年金受給権とかありますが、今回は割愛。
というか、会社を退職した後もその会社から年金をもらえる制度があったというのがビックリビックバンです。都市伝説かと思ったら何回かエンカウントしたので昔はそれなりにあったんですね。
うらやましい限りです。
さて、生命保険金が相続税課されちゃうよ事件ですが、実は原則的考え方だと相続税って課されちゃわない的考え方もできるんですよ。
相続税の原則的な考え方としては「亡くなった人が亡くなった時に所有していた財産」に対して課税されることになります。これには単純に持っている土地や預貯金の他にも、受け取ることの出来る未収金等々も含まれます。
それに対して生命保険金は、亡くなった後に相続人が手続きを行うことで初めてもらえることが確定します。
時点で考えるのは難しいですが、亡くなった人が亡くならなかった場合でも取得できる財産というような考え方をすると生命保険金は該当しない訳です。
ただ、そもそも死亡保険金含めて生命保険は亡くなった時に効力を発揮するもの。だからこそ相続財産としてみなす規定があるんですね。
ツラツラと並べましたが、一番大切なことは生命保険金にも相続税が課されるよってところです。
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2.どんなのが相続税の課税?
さて、じゃあどんな生命保険金に相続税が課されるの? というクエスチョンがバースする訳ですが、これも単純明快。
亡くなった方が保険料を支払っていた生命保険金については相続税が課されます。
これはもう契約者がどうとか保険金受取人がどうとかそんなものは関係なく、亡くなった方が保険料を支払っていた生命保険金が支払われたら相続税が発生します。
逆に言えば、亡くなった方が保険料を支払っていなかった生命保険金については相続税では課されません。代わりに、保険料払っていた人に応じて以下のように課税されます。
①保険料を支払っていた人が生命保険金を受け取った場合→受け取った人の所得税
②保険料を支払っていた人じゃない人が生命保険金を受け取った場合→贈与税
生命保険金が支払われた場合には、まず誰が保険料を支払っていたのかを確認することが大切ですね。
3.その他の効用
①生命保険の非課税
以前もちらっと紹介しましたが、生命保険には結構な金額(相続人1人につき500万円)の非課税枠が設けられています。
ですので、生命保険金を受け取っても実はそれには相続税が課されなかったということも多々。
②遺産分割しない
生命保険金は相続税法で保険金受取人が取得するってはっきり定められています。
ですので、生命保険金については保険金受取人以外の人が受け取ることは出来ませんし、遺産分割の対象にもなりません。基本的に絶対渡したい相手に渡すことが出来ます。
③遺留分も受けない
遺留分とは、相続人が最低限亡くなった人から財産をもらうことが出来る保証権利です。
例えば、ドラマでよくある以下の感じ
悪人「遺言には私に遺産を全部あげると書いてあるのよ! 貴方達がどんなに言ってもあの人の遺産は全て私のもの! 騙された方が悪いのよ! ひゃーはっはっはっはっは!!」
相続人「遺留分あるんで遺産の半分はもらいますね」
悪人「やらかしたー」
遺言で、誰かに全部あげると書いてあっても、相続人には最低限もらう権利があるのでその金額までは請求することが出来ます。
しかし、生命保険金はこの遺留分の対象になりません。
最低限もらえる金額+生命保険金の金額は保証されます。
但し、あまりにも著しく不公平なことをした場合遺留分も加味しないといけないケースもあるので注意。
ちなみに、なぜこんな風になってるかというと、生命保険金は相続税法で定められたみなし財産で、遺留分は民法で定められているからです。そもそも法律が違うんですね。
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4.終わりに
生命保険金については、通常の相続税の財産とは結構異なる扱いがされています。
非課税枠も結構厚かったり、受取人にダイレクトに与えたりと中々特殊な立ち位置にいます。 生命保険金は色々と悪い噂も流れていますが、相続税法上は結構優遇されている面もありますので、熟考した上で使っていくのが吉ですね。