櫃には入りたい
前回は公証役場にて作成する公正証書遺言について確認していきました。
遺言内容について公証人に確認等してもらえる一方、立会人2人と公証人の方が必要だったり、手数料も発生したりと、手間暇も随一でした。
遺言の最終段階では良いにしても、その前段階でもう少し手軽に作成出来る遺言はないのでしょうか。
Contents
遺言のイメージといえば、自筆証書遺言
概要
遺言と聞いて、一番最初にイメージするのは自筆証書遺言でしょう。
ドラマでや再現VTRでよく見かける、「亡くなった方が生前に机に向かってペンを起こす姿」で作成された遺言が、この自筆証書遺言です。
作成方法としては、その名の通り、自分で筆を取って紙に起こして遺言を作成する方法です。
記入事項
自筆証書遺言には、財産や誰に何をあげるかの記載の他、以下の内容は自筆で書くことにしましょう。
- 署名・捺印
- 日付
- 遺言内容
パソコンで作成してもいいの?
平成31年1月13日以降は、遺言に添付する財産目録についてはパソコンで作成しても良いことになりました。
但し、パソコンで作成した添付資料については、それぞれに署名・捺印が必要なのに注意しましょう。
また、遺言の本文等は変わらず、自筆で作成しなければいけません。
自筆証書遺言が3つも4つも見つかったら?
自筆証書遺言は簡単に作成出来る分、1度作成した後「やっぱり内容を変えよう!」としてまた気軽に別個で作成が出来ます。それにより、亡くなった後に遺言がいくつも発見される場合も。
その場合には、前述の「日付」が生きてくることになります。
複数の遺言書が発見された場合には、日付が新しいものが有効になります。
例
- 平成28年の遺言と平成30年の遺言が発見
→平成30年の遺言が有効
代筆はやってはいけません!
これまたドラマで、こんなシーンを見かけたことはないでしょうか。
- 高齢のおじいちゃんに取り入った若き女性が、おじいちゃんに筆を取らせる
- 「私がおじいちゃんの遺産を一旦預かって全部ちゃんと管理するわ!」
- 「そ、そうかぃ。私も老い先短い命。そういってくれるとありがたい」
- 「だから、今のうちに遺言を書いて!」
- 助成は高齢の方の手を握り、ペンをぎゅっと握らせる
- しかし、私ももう字を書くのもつらくて
- だからこそよ! 今書かないともう書けなくなる! 頑張って!!
何が何でも自分で遺言書を記入させようとする図
これ、「いや、あなたが代筆して、署名捺印だけ書いてもらえば良いのでは」と思うことはありませんでしょうか。
そうです。ダメなんです。
自分で書いたものではないと、その遺言は無効になってしまうのです。
だからこそ、遺言者自身に筆を握らせて絶対に自信に書かせようとしてたのですね。
良かれと思って代筆したら、無効になってしまうので注意しましょう。
もし、長い文章を書くのがどうしてもきつい時は、前回の公正証書遺言を検討するのも手です。
公証人に送付する草案については、ワープロ作成で良いため、遺言者が記入する内容を、最後の署名捺印だけにすることも出来ます。
遺言者の死後、自筆証書遺言を見つけたら
家庭裁判所にて、検認の作業が必要
遺言者の死後に遺したであろう自筆証書遺言を発見した場合には、それを家庭裁判所に持っていき検認の作業をしなければいけません。
また、封がしてある場合には、検認時に相続人立会のもとで開封することになってますので、勝手に開封してはいけません。
勝手に開封したら罰則が科せられる可能性がありますので、もし自筆証書遺言を発見したら、開封せずに家庭裁判所に相談をしましょう。
検認に必要な書類
検認時には、検認をお願いする申立書の他、被相続人の出生~死亡までの戸籍一式や相続人等の戸籍が必要です。
相続人の続柄にもよりますが、更に多くの戸籍を取得しなければいけないケースもございます。
戸籍の収集にも時間がかかるうえ、検認自体にもそれなりに時間がかかる場合がありますので、自筆証書遺言を発見したら、早めに専門家に相談することにしましょう。。
自筆証書遺言を法務局での保管が可能になる?
今年の7月10日からは、法務局で自筆証書遺言を保管してくれるようになります。
この場合には、先程の検認作業が必要なくなる予定です。
保管してくれただいぶ便利になりそうですね
次回予告
このページの執筆者
立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。