前回は課税事業者の選択について確認していきましたね。
消費税の納税義務者でない場合であっても、消費税課税事業者選択届出書を納税地の所轄税務署長に提出することで、消費税の納税義務者になることが可能です。
適用を受けるには、前年の12月31日までに提出しなければいけません。
そのため、今年1年間にはもう適用出来なさそうですが……?
Contents
今年は課税事業者の選択特例あり!
新型コロナウィルスの影響により、特例が認められる
課税事業者の選択は、本来、前述の通り前年の12月31日までに届出書を提出しなければいけないため、今年1年分は適用を受けることは出来ません。
しかし、今年は新型コロナウィルスの影響を受けている事業者の方に対して特例措置が実施され、今年中に選択届出書を提出すれば、その適用を受けて消費税の納税義務者になることが可能です。
今年1年間の状況を見て、消費税の納税義務者になるかどうか後出しで決定することが出来ます。
不適用届出書の提出も認められている
今まで課税事業者選択により、課税事業者となっていた方が、適用をやめて消費税の納税義務者ではないようにしたい!ということも可能です。
こちらも本来ならば、前年の12月31日までに提出しなければいけませんが、同様の特例で後出し可能です。
特例を受けるための条件
概要
新型コロナウィルスの影響により、影響を受けた事業者については、課税期間開始後であっても、消費税の課税事業者を選択すること又はやめることが可能です。
消費税の納税義務者になるかならないか、選択出来ます。
条件
新型コロナウィルスの影響により、令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間のうち、任意の1ヶ月以上の期間の事業としての収入が前年同期比概ね50%以上減少している方
持続化給付金の条件とほぼ同じですね。
届出の提出期限
届出の他、今回の特例を受けるための承認申請書が必要になるため、提出すべき書類は以下の2点
- 承認申請書
- 消費税課税事業者選択届出書(不適用届出書)
上記のうち、承認申請書については、50%減があった月が該当する1年間に係る確定申告期限までに提出しなければなりません。
令和2年分ならば、令和3年3月15日(原則では)までに提出しなければなりません。
特定課税期間とは?
国税庁のパンフレットを読むと、特定課税期間という言葉が出てきます。
こちらは、50%減があった月がある1年間のことを言います。
来年度ももしかしたら特例継続出来るかも?
令和3年1月31日までは範囲となっているため、来年1月が今年1月と比較して50%減している場合、来年1年間についても後出し出来るかもしれません。
但し、不明点も多いので、必ず確認は取って下さい。
2年間の継続摘要制限もなし!
この特例で消費税の納税義務者になる場合、2年間の継続適用の制限はなくなります。
令和2年の1年間だけ消費税の納税義務者になり消費税の還付を受けて、令和3年は再び納税義務者でなくなった消費税負担をなくす、といった芸当も可能です。
これ、かなり衝撃的な内容です。基本的に納税者にとってリスクは、ほぼないも同然。
こんな時に提出しよう!課税選択届出書
提出の狙い
納税義務が本来ないのに、わざわざ消費税の納税義務者になる理由は、やはり消費税の還付金を受けるため。
還付金が発生しなさそうな場合には、納税義務者になる必要性は薄いです。
消費税の納税義務者になる
消費税の納税義務者になることで、消費税の還付を受けることが可能になります。
詳しくは前回の記事を参照していただけると嬉しいです。
消費税の納税義務者に実際になる前に、どれだけ消費税が還付(又は発生)するのかある程度試算出来ますので、必ず慎重に検討してから、納税義務者になるようにしましょう
どんな時に還付は発生するのかな
収入に係る消費税よりも支出に係る消費税が上回った場合に、還付が発生します。
注意点として赤字になったからといって、還付が受けられるのではなく、消費税が発生するもので比較をしなければいけません。
消費税が発生しない具体例を挙げると次の通り
- 給付金関係
- 人件費
- 減価償却費
特に人件費は経費のウエイトが大きいと思いますので、人件費が経費の中で大きく発生している場合には、赤字でも消費税の還付が発生しないことも多いので注意しましょう
給付金関係
新型コロナウィルスの影響により数多くの給付金が支給された令和2年。
これらの給付金には、消費税が課税されません。
今年の利益で給付金が大きなウエイトを占めている場合、還付金が受けられる可能性があります。
この特例を受けることが出来る場合、還付金を受けることが出来る可能性が高い
この特例は、売上が前年比50%減している月がある場合に受けることが出来ます。
売上が減少(=収入に係る消費税が減少)し、固定費は変わらず支出(支出に係る消費税は変わらない)場合、上記の給付金には消費税が課税されないこともあり、消費税の還付金を受けることが出来る可能性が高くなります。
必ず、一度検討しましょう。
こんな時に提出しよう!不適用届出書
提出の狙い
課税選択により消費税の納税義務者になっている場合で、消費税負担を軽減するため、消費税の納税義務者から外れることが狙い目となります。
意外と、提出する機会は多くない?
提出することにある程度意義のある条件は以下の通り
- 2年前の売上が1,000万円以下で元々納税義務者ではなく、課税選択により納税義務者になっている
- 消費税の還付金が発生しない
課税選択を提出する目的の大きなものが還付金を受けることですので、そもそも還付金が発生しない状況であれば、不適用届出書を出せる場面はそこまで多くはありません。
意外と提出する機会は少ないかもしれませんね。
今年は税理士さんに相談することを推奨します
コロナの影響を受けて厳しい時に、少しでも税負担を軽く
今年1年間は新型コロナの影響を受けて、かなりの打撃を受けている事業者の方が多いです。
こんな特別な1年だからこそ、消費税を少しでも軽減しようと特例を今回も受けてくれています。
税負担を少しでも軽くすることで、影響を少しでも抑えられれば……
但し、消費税の試算や上記届出についてはかなり複雑なことが多く、慎重に検討しなければなりません。
今年の消費税関係については、少しでも税負担を軽くするため、税理士さんに相談することをお勧めします。
このページの執筆者
立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。