こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。
前回、五千万円の貸付金が事業に該当し、事業所得になるか否か裁決事例を紹介しました。
五千万円と聞くと高額で大規模にも見えますが、状況によっては該当しないしないとの裁決。
今回は、それに附随して、五千万円の貸付に係る費用が事業所得に係る必要経費として認められる否かで争った裁決事例を紹介していきます。
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
Contents
前回のざっくりとした復習
今回の裁決事例の前提として、前回のざっくりとした復習はこちら。
- 五千万円の貸付金は諸々の理由から事業に該当せず、事業所得ではない
詳細はこちらからどうぞ。
五千万円の貸付けに係る費用は事業所得の必要経費に該当する?
出典:国税不服審判所ホームページ(令和2年12月14日裁決・争点番号200904990)
なお、裁決事例集には登載されておりません。
令和2年12月14日裁決・五千万円の貸付けに係る各費用は事業所得に該当するか否かで争った裁決事例
請求人(納税者側)の主張
第三者に対して行った五千万円の貸付けに係る回収費用・訴訟費用・貸倒損失は事業所得に係る必要経費として計上出来るべき。
原処分庁(税務署側)の主張
前回のとおり、所得税法第27条第1項(事業所得)の事業に該当しないので、事業所得ではない。
よって、事業所得の必要経費となる余地はない。
結論
棄却(事業所得必要経費に計上出来ない)
本裁決のポイント
事業所得に該当しなければ事業所得の必要経費に計上出来ない
至極当然の話ではありますが、事業所得に該当しなければ事業所得の必要経費には計上出来ません。
しかし、なぜ事業所得の必要経費に計上したかったのでしょうか。
お金の貸し借りは怖い
上記裁決事例とは関係ありませんが、請求人が主張した必要経費の内容が「訴訟費用・貸倒損失」という内容から、貸付けた五千万円の回収の為に訴訟を起こしたが、相手方の回収不能等の理由から回収可能性が見込めない状況になったということが推察されます。
五千万円もの高額なものですから、回収可能性が見込めないのはかなり厳しいのではないでしょうか。
お金の貸し借りは怖いもの。税金以前にこれらの恐ろしさも感じます。
事例内容から見えない「事業所得の必要経費に計上したい理由」を見る
事例内容では紹介していませんでしたが、今回請求人が「事業所得の必要経費に計上したかった理由」を推察します。
恐らく、損益通算を行いたかったのではないでしょうか。
損益通算とは、事業所得等から生じた損失を、お給料等と相殺して、その年分の税額を減らす規定です。
理由としては「損益通算しなければ、事業所得でも雑所得でもほぼ変わらない」というものが挙げられます。
全く一緒ではありませんが、損失それだけの場合、どちらにせよ税額は0円という結論は変わりません。
しかし、お給料等の他の収入があった場合には、五千万円以上もの損失をそれと相殺することで、他の収入もまとめて税額をかなり軽減(恐らく0円)にすることが出来ます。
上記の損益通算を狙って、事業所得を主張していたのではないかということが推察されます。
副業で問題になりやすいところでもある
この損益通算は、身近な副業でも問題になりやすいところ。
収入がほぼない副業を事業所得として行い、経費を多く計上する。そこから生じた損失をお給料等と損益通算する問題は多く聞きます。
前回のとおり、事業所得に該当するのは事業のみ。副業等では事業所得には該当しないので注意しましょう。
まとめ
・そもそも事業所得ではないため、計上出来ない
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
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このページの執筆者
立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。