こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。
所得税の青色申告には、帳簿書類の備付け等の義務が生じます。
聞き馴染みの薄い言葉の帳簿書類。帳簿書類がどんなものか少し分かりにくいところもあるかもしれません。
今回は、帳簿書類の備付け等で争った裁決事例を確認していきます。
以前、法人でも帳簿書類の備付け等で争った裁決事例を紹介しましたので、良ければこちらもどうぞ。
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
Contents
青色申告では、帳簿書類の備付け等が要件とされている
帳簿書類ってどんなもの?
帳簿書類とは、現金出納帳や総勘定元帳といった、会計内容を構成する書類のことを言います。
具体的な種類については、以前紹介したものがありますので良ければこちらをどうぞ。
青色申告の場合、帳簿書類の備付け等が必要
青色申告の場合、一定の帳簿書類の備付け等が必要となります。
帳簿書類は聞き馴染みも薄く、難しいもの。自分が作成した書類が実は帳簿書類に該当していないということもあります。
この場合、帳簿書類の備付け等がなかったとし、青色申告を取り消されてしまう場合もあります。
今回は、青色申告の取消を巡り、帳簿書類の備付け等について争った裁決事例を紹介します。
帳簿書類の備付け等で争った裁決事例
出典:国税不服審判所ホームページ(令和2年10月13日裁決・争点番号202402010)
なお、裁決事例集には登載されておりません。
令和2年10月13日裁決・帳簿書類の備付け等に該当するか否かで争った裁決事例
請求人(納税者側)の主張
自分の事業に係る書類として、以下のようなものを作成した。
- 請求人の事業に係る各年分の収入や支払等の金額を記載したノート(本件各ノート)
- 預金通帳から取引ごとに作成した出金伝票(本件伝票)
- レシートなどの領収書及びそれらから作成したメモ等
上記のような書類は、所得税法第148条第1項(青色申告の帳簿書類)に規定する備付け等を義務付ける帳簿書類に該当する。
よって、帳簿書類を備え付けていたとして、青色申告の取消は行われない。
原処分庁(税務署側)の主張
所得税法第143条(青色申告)の承認を受けている居住者は原則として、正規の簿記の原則に従い記録した帳簿の備付けが必要。又は、簡易帳簿でも良いとされている。
請求人が作成していた書類については、以下のような事由がある。
- 本件各ノート及び本件伝票は、備え付けられていたものではなく、調査に係る事前通知後に作成されたものであること
- 領収書は、いわゆる証憑類の域をでない書類で帳簿書類には該当しない
- 請求人は、調査の事前通知以前に現金出納等に係る事項を記載した書類を作成していない。
上記のような理由から、今回の検査にあたって適時に帳簿書類を提示することが可能なように態勢を整えていなかった。
簡易帳場もとより、帳簿と評価し得る書類の備付け等もしていなかったため、原処分庁の調査担当職員の提示要求にも応じることが出来なかった。
よって、帳簿書類の備付け、記録及び保存は満たしておらず、青色申告の取消の事由に該当する。
結論
棄却(青色申告の取消の事由に該当する。)
本裁決のポイント
簡易帳簿は基より、そもそも帳簿と評価し得る書類ではなかった
本裁決のポイントとして、請求人の主張にある書類は、簡易帳簿含め、帳簿と評価し得る書類ではなかったと判断されている。
本件各ノートや本件伝票は事後作成
請求人が帳簿書類として主張した本件各ノートや本件伝票は、事前通知後に作成が行われたもので、事後作成したものであると。
事後作成であるならば、帳簿書類の記録が行われていないこととなり、備付け等に該当しない。更に、検査時に適時に提示することが可能な態勢を整えてはいないという。
上記のような理由から帳簿書類の備付けに該当しないと判断されています。
これらの書類については、事後作成であることがポイントに感じます。
領収書やレシートは帳簿書類ではない
ならばと、もう1つの請求人の書類である領収書やレシート、メモ書きはどうでしょうか。
こちらは事後作成ではなく、事業年度中から保存がされていたものですが、領収書等はそもそも帳簿書類ではなく証憑類という判断がされています。
調査の時に「帳簿書類です」と言って大量のレシートを出されても困ってしまいますものね。
領収書やレシートでは、これら証憑類を基に作成された書類である帳簿書類には該当しないという判断ですね。
事前に作成・保存し、調査時に適時に提示して初めて備付けを満たす
帳簿書類は、事前に作成・保存し、かつ、調査時に適時に提示することで初めて備付けの要件を満たします。
冒頭で紹介した、税理士のみが把握している場合の裁決事例にも繋がることですが、調査時において適時納税者の判断で適正な帳簿書類を提示することが可能な態勢を整えて、初めて帳簿の備付け等の要件を満たすことになります。
作りっぱなし・事後作成では、疑義の目が向けられる可能性もあるので注意しましょう。
まとめ
・事後作成では適時の提示が出来ない他、領収書やレシート等は帳簿書類ではない
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
このページの執筆者
立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。