混同はこんどぅやるよ~
前回は混同の内容について見てきました。かなりマニアックな内容でしたね。
混同の取り扱い内容については、難しく考えず
- 相続税的には通常と同じ
- 被相続人と貸し借りをしている当事者が取得した場合には混同で消滅
上記のようなざっくりとして取り扱いでも問題ありません。
それでは、この混同はどんな時に起きやすいのでしょうか
Contents
混同が発生しやすい状況
混同は被相続人⇔相続人間でのお金の貸し借りがある場合に発生します。
被相続人と相続人の関係としては、大きく分けて
- 配偶者
- 子供
- 親(祖父母)
- 兄弟
の4つに分けられます。兄弟は少し遠いですが、その他は親族の中でも関係性が濃密で、正式にお金の貸し借りをすることは多くありません。
この親族間で混同が発生しやすい状況とはどのようなものがあるのでしょうか。
被相続人から相続人へ送金等を行っている場合
概要
生前に被相続人から相続人に送金等を行っている場合、状況にもよりますが、以下のようなことを疑う必要があります。
- 被相続人から相続人への贈与
- 被相続人から相続人への貸付
- 名義預金
名義預金については、少し趣向が異なるので今回は除外し、贈与か貸付かについて考えてみます。
ここで、貸付に該当する場合には混同を加味する必要が生じます。
親族間での送金はかなり曖昧
これは世間一般からしたら当たり前の考え方なのですが、関係性の強い親族間で
意識してお金の贈与や貸し借りをすることはあまりありません。
しかし、被相続人の方の通帳を拝見させていただくと、相続人名義への通帳へ数百万単位の振込があることは珍しくありません。
この時に考えなくてはいけないこととして、先程の2点
- 被相続人は相続人に贈与をしたのか?
- 被相続人は相続人に貸付けた(返してもらう気持ちがあった)のか?
ということを検討する必要があります。
贈与と貸付の取り扱い差と混同が発生する状況
もし、贈与ということならば、生前贈与加算や当時の贈与税申告の有無、更には贈与税の期限後申告の検討もしなければなりません。
相続開始の日から直近3年以内であれば、生前贈与加算で贈与税は加味されますが、3年より前の場合には贈与税を払ったら相続税には影響を与えません(その金額は相続財産にはなりませんが)
また、特別受益等についても加味しなければなりません。
この場合、贈与ではなく貸付(相続人から見たら借りていただけで返す予定だった)の場合には、混同が発生することになります。
この辺りはかなり曖昧な部分ですので、実態を把握して検討しなければいけません。
被相続人の事業に従事してお給料をもらっている場合
概要
被相続人が個人事業主・フリーランスで個人事業を行っており、被相続人から相続人へお給料を支払っている場合、未払給与がある場合には混同を加味する必要があります。
親族間同士ですと、
今はちょっと資金繰りが厳しいからお給料の支払をちょっと待って!!
ということは多々あります。
この場合に会計処理上で
人件費/未払費用
のように仕訳を行っている場合には、この未払給与が被相続人から相続人への債務となりますので、相続税でも債務として検討することになります。
ここで、混同を加味する必要が出てくるということですね。
青色事業専従者の場合
青色事業専従者の場合、未払では人件費を計上出来ないため、被相続人の決算書上には青色事業専従者給与・未払費用共に計上されてきません。
この場合には、より慎重に検討する必要があります。
遺産分割協議はどうする?
概要
取得・承継した瞬間に消滅するといっても、相続財産債務には計上されるので遺産分割協議にも記入しなければなりません。
混同を特別に記入する?
被相続人⇔相続人間でのお金の貸し借りがあった場合には混同が発生するのは前回の通りですが遺産分割協議書の書き方として
- 他の財産と同じように書く
- 混同が発生することを特別に記入する
方法がありますが、どちらかがいいかと言いますと
正直、どちらでもいいんじゃないかなぁと思います。
取得・承継したら当然のように混同は起きますし、特別に記入していたら丁寧だよね、という感覚です。私は、以前の勤務先で混同を特別に記入していたので今でも混同があったら記入していますが。
不動産や預貯金と違って、名義変更等に使用する機会もないので、その辺りはある程度好みでもいいのかなとは思います。
次回予告
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このページの執筆者
立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史 ※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。