爪とぎ帳簿
前回までは帳簿書類の種類やその内容について確認していきました。
確認していったとは言え、数が多すぎるよ!こんなに作れないよ!
という感想もあるのではないでしょうか。
それでは、全て作成しなければいけないのでしょうか。
Contents
補助簿は全て作成する必要はない!
前提として、補助簿を全て作成する必要はありません。
主要簿である総勘定元帳と仕訳帳は作成しないと青色申告特別控除65万円(55万円)を受けることが出来ませんが、補助簿は全てを作成する必要はありません。
仕入がないのに仕入帳作成するなどの1年間白紙帳簿とかは必要ありません。
基本的に、ほぼ全ての方に出てくるであろう
- 現金出納帳(と預金帳)
- 固定資産台帳
がメインになってきます。
その他は事業者自身が確認しやすいものを作成すれば大丈夫です。
様々な相手と取引するフリーランスの場合
おススメ作成帳簿:現金出納帳(預金帳)・売上帳・経費帳
様々相手と取引するフリーランスの方の場合には、売上帳・経費帳の作成がおススメです。
フリーランスと言えば、自分のスキルを活かして様々な相手と自由に取引を行っていく形態がありますね。個人的にはこの感じが「ザ・フリーランス」という感じがします。
- 自分の方針でお客様と話す税理士
- 依頼を受けて声データを納品する声優さん
我が税理士含め、デザイナーなど、様々な職業が該当しますね。
様々な相手と取引を行うので、未収入金が多く出ることが予想されます。
未収金の回収漏れや入金期限済のものを確認出来るよう、売上帳を作成しておくと非常に便利。
また、仕入がほぼない分、多岐に渡る経費の認識を行いやすくするために経費帳の作成もお勧めです。
売上で1,000万あげたけど、何か手元にお金が残らないんだよな~と思ったら外注費で800万円支払っていた、等々、売上だけじゃなく経費の過大も見えやすくなります。
ちなみに、経費帳は私も作成しています。税理士はあんまり経費の種類もないのですが便利と言えば便利ですね。
取引先がほぼ特定の事業者のみのフリーランスの場合
おススメ作成帳簿:現金出納帳(預金帳)・経費帳
フリーランスの中でも、特定の事業者にのみほぼ取引を固定している場合には、経費帳の作成がおススメです。
フリーランスの形式の中には、先程のように自分で自由に個人プレーを行う形式だけでなく、特定の事業者のみと取引を固定している方も少なくありません。
- 一定額までは固定給だけど、それ以上はインセンティブに応じて保険会社からの報酬の決まる保険外交官
- 講師業として外注を委託されている非常勤講師
- 特定の店舗に在中し、所謂、面貸しとして外注を受ける美容師
他にも、web関係や士業でも最近よく見かけるようになりました。
最近の勤務形態のトレンドなのでしょうか。会社側からすれば経費負担や社会保険料負担もないので、負担的には軽くなる部分もあります。
このような形態の場合、売上入金元については非常に少ないことが多く、売上帳を作成しなくてもある程度認識出来ることから売上帳は作成しなくてもいいかもしれません。
売上はある程度予想・認識出来ることから、経費側の認識がより重要になってきます。実際に手元に残る金額の把握にも大切なウェイトを占めますね。
外注費がかなりあるフリーランスの場合
おススメ作成帳簿:現金出納帳(預金帳)・売上帳・経費帳
外注費が多く発生する場合には、売上帳・経費帳の作成がおススメです。
1人で行っているフリーランスの中には、同じ業種の方に分業のように外注を行っている方もいるのではないでしょうか。
- 相続の仕事が来た際に、戸籍の収集や残高証明書の収集は他の士業さん等に外注
- 趣味を教える教室で、同業者の中から講師を外注
- 面貸しを行う側の美容師
このような場合、仕入がないとはいえ、実質的に外注費が仕入的な性質があります。
100万円の売上をあげるには、外注費が30万円かかる!等々の場合ですね。
売上に対して直接的に対応する費用が発生するので、利益率を検討する上で、外注費の認識はとても大切になります。
単純な売上の数字だけ見たら、一見、すごく売上が高いように見えて、外注費が多く発生していたら実質的な利益はそこまでありません。
より、実態を確認するのが大切ですね。
経費帳、というよりは外注費だけをまとめた帳簿の方がいいかもしれません。
次回予告
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このページの執筆者
立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。