消費税廃止決定⁉
税率引上・軽減税率・廃止マニュフェスト
私達に最も身近な税金の1つである消費税。最近、8%から10%に引き上げられたり軽減税率制度が導入されたり、それに伴うキャッシュレス還元(終了)が導入されたりしたことは記憶に新しいですね。
誰しも必ず買い物はする訳で、そこに発生してくることから、ほぼ全ての方が払っている密着型の税金です。
その分、一般・税理士共にトップレベルでヘイトを集めやすい税金の1つですね。
税理士からヘイトを集める税金というのもかなり珍しいですね。可哀そう。
ヘイトを集めるだけあって、探せば常に「消費税減税」「消費税廃止」「消費税0%」というワードが存在しています。私は消費税があるのが当たり前な世代なのですが、消費税がない時代はもっと買い物が気軽に出来たのでしょうか。
そんな消費税ですが、実は既に廃止になったものが存在しています。
Contents
平成12年(2000年)3月31日・廃止
今から約20年前、「特別地方消費税」という名の消費税が廃止されました
現在あるメインの消費税は、国に払う消費税(7.8%)と地方に払う地方消費税(2.2%)の合計(10%)となっていますが
約20年前には、特別地方消費税というものがありました。
特別地方消費税とは?
概要
特別地方消費税とは、飲食店や旅館、クラブ、カフェ、バーや休憩場所等のみに対して課税する税目です。
感覚としては、入湯税やゴルフ場利用税と似たようなものでしょうか。
課税標準
料金を課税標準としています。
当時は、これらの職種は特別地方消費税に係る届出等の提出も必要だったとのこと。
税率
廃止直前では、100分の3(3%)です。
現在の消費税10%に比べると少なく感じますが、これは消費税とは別に発生するので、上記職種だけ消費税が実質13%になるイメージです。
軽減税率(テイクアウトだけですが)が適用されうる職種が、以前は一般より重い税率だったって不思議な感覚ですね。
特別消費税の免税
料金による免税・飲食店
飲食店等については、1人1回につき7,500円以下の場合には、特別地方消費税が課すことが出来ません
料金による免税・旅館
旅館については、1人1泊につき5万円以下の場合には、特別地方消費税が課すことが出来ません
利用相手による免税
修学旅行等による飲食や旅館の宿泊には、特別地方消費税を課すことが出来ません。
今の消費税も同じようにしてほしいですね。
他にも、外国からの大使等についても一定条件下で課すことが出来ないとのこと
特別地方消費税廃止の背景
様々な理由がありますが、特別地方消費税廃止の背景として代表例として挙げられているのは
私達がよく知る消費税(地方消費税)の創設等の理由により廃止になったとのこと。
前述の通り、消費税の他に特別地方消費税が発生するので、一部の職種だけ消費税が重かったのが原因でしょうか。ほぼ2重課税ですしね
また、地方消費税があるから、わざわざ特定の職種に対して課す特別な消費税を設ける理由がなくなったのかもしれませんね。
特別地方消費税の歴史
古くは大正8年(1919年)から石川県金沢市が市税として創設されたとのこと(もっと古くからあるという噂もありましたが、公的なものが見つけられなかったので、こちらをスタートにします。)
元々は、遊興税という名前で導入され、いくつもの名称をかえていった数奇な運命を辿った特別地方消費税。
以下の年代に分けて簡単に紹介していきます。
大正8年(1919年)・設立当初
贅沢する人の無駄遣いから税金を取る
遊興税という名称の基、石川県金沢市で市税として創設。当時の情勢としては、第一次世界大戦が終わった直後当たりですね。
当時は、料理店等の中で、芸妓さんが伴うことが条件の1つでした。
芸妓さんというのは、芸者さんやコンパニオンさんのことですね(厳密には違いがあるのでしょうか)
ちなみに、当初、遊興へ対する課税については、当時の大蔵省(現在の財務省)主税局国税のお偉いさんが「初めての試みだけど、いいことだ。贅沢する人の無駄遣いから税金を取るのはいいことだ」と意見を述べて支持していたとのこと。
芸妓さんが伴うことというのは、当時、非常に贅沢なことだったのでしょうかね。
その後、贅沢な無駄遣いから徴収する、という内容が支持されたのか、どんどん広がっていき、大正15年には府県税として課税することが出来るようになったとのこと。
昭和14年(1939年)・戦争の災禍へ
贅沢の基準が変わってきた?
遊興税として名を馳せた特別地方消費税。昭和14年には、遊興飲食税として、遂に国税へと移りました。
市税から府県税へ、そして国税に移るってすごいですね。
当初の情勢としては、日中戦争・第二次世界大戦。
ここから、芸妓さんを伴わなくても、料理店等での飲食代や旅館の宿泊料に対しても課税されるようになりました。当時の贅沢する人の無駄遣いから税金を取る、という性質が少し薄れたように感じます。
戦争下という中で、贅沢の基準自体が変わっていったのかもしれませんが……
税率の変移
昭和14年の税率は20%(芸妓さんへの花代で、一番高い税率。以下は芸妓さんへの花代の税率を前提にします)だったとのこと。現在の消費税10%の倍と考えると、かなり重い税という印象です。
昭和14年の20%でも十分重いですが、戦争末期の昭和19年(1944年)には
税率が驚愕の300%に大増税。
30%ではなく、300%です。本来の料金の3倍の税金を徴収する異常な増税です。
戦争の災禍と遊興税
この異常な増税の背景には、戦争があり、「消費の抑圧」「国民精神の緊張に資する」等の理由が挙げられていたとのこと。
所謂、国民精神総動員の「ぜいたくは敵だ」「日本人ならぜいたくは出来ないはずだ」「欲しがりません勝つまでは」といった標語が、税金にでも実践されていたのが伺えます。
300%の大増税がまかり通ってしまうあたり、当時の日本の情勢が伺えますね。そもそも、戦時下という特殊な事情で芸妓さんがいなかったということもあるとのことですが。
昭和22年(1947年)・再び地方税へ
終戦から約2年後の昭和22年。国税としての遊興飲食税は廃止になりますが、遊興税(遊興飲食税)としてすぐに復活。再び地方税へと戻ります。
これ以後、300%という異常な税率はぐんぐん引き下げられていきました。そりゃそうだ。
昭和36年(1961年)・名称変更その①
時代が変わり、名前が分かりにくくなったのか、遊興飲食税から料理飲食等消費税へと名前が変更されました。
昭和63年(1988年)・特別地方消費税へ
記憶に新しい消費税導入。これに合わせた形で、遊興飲食税(料理飲食等消費税)も、遂に現代に馴染み深い、特別地方消費税として名称変更しました。
これにより、消費税と特別地方消費税が遂に共存することになります。
平成12年(2000年)・そして、廃止へ
大正時代から戦時中を超え、名称を変更しながら脈々と受け継がれてきた遊興飲食税・特別地方消費税が遂に廃止へ。
約81年の歴史に幕を閉じました。
元々、消費税的な性質を持っていたこともあり、消費税が導入されたこと等の理由により、二重課税問題等の理由から廃止へ
また1つ、税金の歴史の中、バトンタッチがなされたということですね。
税金から見る戦争に対する1つの教訓
戦争の歴史は時代と共に薄れつつあります。現に私も戦争を知らない世代ですし、戦争を知っている世代は既に2つ以上離れています。祖父や祖母からのまた聞きや授業での出来事、として、あまり現実味がないのも事実。
その中で、徴兵といった現実味がないことではなく、税金という少し現実味があるもので考えると、どんな状態だったというのが分かりますね。
平和な日本になってとてもよかったです。
もし、また戦争が始まったら、また消費税が10%から300%になるかもしれないですね。
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このページの執筆者
立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。