コラム

相談時は心の目線を相手に合わせることの大切さを租税教室から学んだ話

税理士会が行っている活動の1つに、租税教育というものがあります。

小・中・高・専門学生など幅広い世代に対し、実際に教室に赴いて、教育(社会科?)の一環として授業を行います。

税金とは!という内容について、単に税金はどんなところに使われているという内容だけではなく、税金とはなんぞや、といった深い範囲まで授業を行う租税教室。

この活動に携わって数ヶ月経ち、生徒数で言うと数百人は超えたのですが、改めて、教える側でありながら様々なことを学ぶことが出来たなぁと感じました。

教えるというのは、難しい

教える側と教えてもらう側の違い

租税教室という活動で、実際に教室の教壇に立ち、生徒さんの前で授業を行った所感として

人に何かを教える・伝えるのって難しいな、と感じました。

これまでの人生の中で、学校や税理士試験の講義を受けてきたので、教えてもらう側としては既に経験がある訳ですが、教える側と教えてもらう側の感覚は全然違うんだなと思いました。

学生時代に、「この先生の授業面白くないな~分かりにくいな~」とか偉そうなこと思ったことを大変反省しました。

教える側は、自分の知識を外に出す「アウトプット」の能力が必要となり、教えてもらう側は、その知識を受け入れる「インプット」の能力が必要になります。

いくら知識があっても、アウトプットする能力がなければ、人にうまく伝えることは出来ないんだなぁ、と改めて感じました。

台本に沿って進行する?

租税教室は、各講師に完全に任せられているのではなく、ある程度統一された大枠が存在します。その大枠に沿って、内容を解説していくという形ですね。(東京税理士会ではそうです。他の地域ではまた違うのかもしれません)

また、講師をやるハードルを下げるためか、事前に台本なども用意されています。

そのため、その台本通りに行えば、進行自体は出来るのですが……?

インプットとアウトプット両方必要

自分の言葉で発信する難しさ

個人的な感覚なのですが、全く台本通りに読上げて行くと、消化不良感がとても残ります。

何となく実感してもらえるかもしれませんが、教えてもらう側に立った際、教材を読上げている「だけ」、資料を読上げている「だけ」という授業の場合

資料を読めばいいだけで、そこに講師がいる必要性が薄くなってしまうんですね。

そのため、資料を読んで、それを自分なりに理解し、自分の言葉で発信しなければなりません。

資料を自分のものにする力とそれを自分の言葉で発信する力

資料を読み、自分の言葉で発信するためには、資料を自分の物にする「インプット」と自分の言葉で発信する「アウトプット」の能力が両方とも必要になります。

資料の内容を本当に理解し、何を伝えたいのか、何を伝えるべきなのかを、作成者との対話を通じてインプットする工程

インプットした内容を自分の言葉で発信し、相手に伝わりやすくするアウトプットする工程

最低でも、この2工程がなければ、自分の言葉で発信することは出来ないのかな、と改めて認識しました。

全てをインプットしなければいけないが、全てをアウトプットしてはいけない

資料を自分なりに理解するには、基本的にほぼ全てをインプットしなくてはいけません。

しかし、インプットした物全てをアウトプットすることは必ずしも正しいことにはなりませんし、大抵の場合、受け手側がよく分からなくなってしまいます。

受け手側からしたら、授業という短い時間で多くのことをインプットしなければならないため、要約して伝える必要があります。

要約して伝えるためには全てを理解しなければいけませんが、だからといって全てを伝えてはいけない、入り口と出口の情報量の調整する必要性があります。

せっかく理解したなら全部伝えたい!となってしまいますが、そこは要約した言葉の中に溶かすに留まり、胸の内にしまっておく。

これが、言葉や情報の深みというものなのかな、と思いました。

予想外の質問も

そこに興味を持ってくれた!?という質問をもらうこともよくあります。

教える側と教えてもらう側の着眼点が異なることはよくあり、ちょっとした資料の片隅をついて聞かれることも多々あります。

例えば、税金の種類の中で「入湯税」というものがあります。

日本の税金の種類を例示する中に、この「入湯税」があり、入湯税ってどんな税金?という質問をされたことが多々あります。

予想外の質問をもらうと、改めて自分はよく知らないことが多いということと、受け手側の興味がどこに向いたのかというのが分かり、とても勉強になります。

ちなみに、入湯税については実際に質問をされて色々調べてまとめた記事がありますので、観ていただけるととても嬉しいです。

租税教室で受けた感覚をスポット相談でも

対複数と1対1では勝手が違うけど、本質は同じ

最近スポット相談のサービスを開始したのですが、ありがたいことに数件のご依頼をいただくことが出来ました。

租税教室で感じた、インプットした情報を自分で理解して自分の言葉でアウトプットする・情報を要約するということは、相手の立場に立ち、より分かりやすく伝えるために行うことが背景にあります。

租税教室とスポット相談。

対複数と1対1では勝手や密度は違いますが、相手の立場に立ち、相手を見て、相手に合わせて伝えるという本質は変わらないですね。

相手の立場に立ち、相手を見て、相手に合わせて伝える

租税教室を通じて、改めて、相手に何かを伝えるためには、相手の立場に立って相手と対話することが大切なんだと感じました。

子どもと会話する際には、姿勢を落として同じ目線で会話をすると、圧力がなくて子ども安心感を持って話しやすくなってくれると言います。

実際に身体でやるのは目に見えて分かりやすいのですが、心の目線というのは目に見えにくいため、行えていないのかもな、と改めて自分と向き合う必要性がありますね。

心の目線を相手に合わせて会話をすることの大切さ、そんな当たり前のことを改めて感じました。

このページの執筆者

立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史

※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。