裁決事例紹介

不動産取得税と贈与税はその性質が異なるから取得費に算入することは出来ないとした裁決事例

ジャガーネコ
ジャガーネコ
譲渡所得の計算では、収入金額から取得費を差引いて計算するんだよ!
ミケ君
ミケ君
取得費というのは、資産の取得に要した金額だよね。つまり、贈与税も対象に!?
ジャガーネコ
ジャガーネコ
贈与税は……ならないんだ……。

こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。

確定申告で大きな論点の1つとなる譲渡所得。

事業所得などの毎年発生するようなものとは別に、不動産等を売却した際に発生する臨時的な確定申告ですね。

それでは、この譲渡所得はどのように計算を行うのでしょうか。

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。

譲渡所得の基本的な計算方法

譲渡所得は総収入金額から取得費及び譲渡経費を差し引いて求める

譲渡所得は、その譲渡に係る総収入金額から、その売却に係る資産の取得費と資産の譲渡に要した費用(譲渡経費)を控除して求めます。

それでは、取得費とはどのようなものなのでしょうか。

取得費は、資産の取得に要した費用

取得費は、ざっくりと解説すると、下記のようなものが該当します。

⑴その資産の取得に要した金額

⑵資産を取得するための付随費用

⑶その他、改良費など

上記のような取得費には、不動産を取得した際に発生する不動産取得税も含まれます。

そのため、不動産取得税については、取得費として譲渡所得の計算上控除することが可能です。

不動産取得税も贈与税も、取得時に発生する税金だけど?

さて、ここで1つ疑問点が生じます。

取得時に発生する税金として、贈与を受けた際に発生する贈与税というものも存在します。

それでは、贈与税は取得費として譲渡所得の計算上控除することができるのでしょうか。

出典

出典:国税不服審判所ホームページ(令和年月日裁決・争点番号201304026)

なお、裁決事例集には登載されておりません。

令和4年6月28日裁決・不動産取得税と贈与税は性質を異にすることから、前者は取得費となり後者は取得費とならないとした裁決事例

請求人(納税者側)の主張

譲渡した土地の共有持分の贈与を受けた際に支払った贈与税について、この譲渡所得の計算上控除することが可能である。

同じように取得時に課税が行われる不動産取得税が取得費として控除されるならば、この贈与税も取得に要した費用であることから、この贈与税も譲渡所得の計算上、取得費に算入されるべきである。

原処分庁(税務署側)の主張

受贈者が贈与者から資産を取得するために通常必要と認められる費用を支出している場合には、「資産を取得するための付随費用」として、譲渡所得の計算上控除することは可能である。

その一方、贈与税は、一定の経済的価値の流入に対してのみ課税される租税であり、贈与の際に支出される資産を取得するために通常必要と認められる費用ということはできない。

また、不動産取得税は、不動産取得税は、不動産の所有権の取得の事実に着目して課される租税であり、地方税法に定めのない限り、有償であるか無償であるか、形式的な所有権の取得であるか実質的な所有権の取得であるかを問わず、私法上の不動産の所有権の取得が全て課税原因となるものであり、不動産の贈与を受けた際に支出される当該不動産を取得するために通常必要と認められる費用ということができるから、当該不動産を取得するための付随費用と認められる。

上記のことから、贈与税と不動産取得税は、その性質を異にする。

したがって、本件贈与税は、土地を取得するために通常必要と認められる費用ということは出来ず、取得費に算入することはできない。

結論

棄却(取得費に算入することはできない)

本裁決のポイント

不動産取得税と贈与税はその性質が異なる

請求人は、贈与税が取得費に算入される根拠として、取得時に課税が行われる不動産取得税を引き合いに出して取得費に算入されると主張しました。

しかし、原処分庁は、贈与税と不動産取得税はそもそもその性質を異にしており、それぞれの性質を説明したうえで、控除出来ないと判断しています。

贈与税の性質

贈与税は、「一定の経済価値の流用に対してのみ課税される租税」と説明しています。

贈与税が発生するのは、贈与を受けた時のみであり、有償で購入した場合など、贈与以外の取得には発生しません。

取得時に課税が行われる、というよりは、一定の経済的価値が流用されたことにより課税が行われる、という性質のようですね。

不動産取得税の性質

それに対して、不動産取得税は「不動産の所有権の取得の事実に着目して課される租税」とし、その取得がどのような形であれ、不動産の取得が課税原因となるものであるとされています。

これについては、不動産の取得に対して課税が行われるという性質のようですね。

経済的価値の流用と取得に対する課税

上記の差異としては、贈与税は経済的価値の流用に対する課税・不動産取得税は取得が課税というものが伺えます。

贈与税は、取得に必要な租税ではなく、経済的価値の流用に対する課税のため取得費に算入できないという印象ですね。

同じように見えるものでも取扱いは異なって難しい

贈与税と不動産取得税は、取得時に発生する租税に一見見えてしまうため同列に扱わない理由を改めて説明するのは少し難しいと思いました。

贈与税は取得費にはならないということは分かっていても、改めて説明を見ると難しいですね。

勉強になります。

まとめ

贈与税の取得費算入の是非のまとめ

・贈与税は、経済的価値の流用に対する課税のため取得費に算入できない

当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
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このページの執筆者

立川のネコ好き税理士 藤本悟史

※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。