前回は、相続が発生した場合の簡易課税の適用の特例について確認していきました。
簡易課税は原則課税とガラッと計算方法が異なるもので、原則か簡易かで税額が大きく異なることも少なくありません。
簡易課税を適用するかどうかは前年中に検討しなければならず、その後に目論見が外れても取り返しが基本的につきません。
しかし、今年1年間はコロナにより未曾有の事態に。
納税義務者の選択のように、こちらについても何か特例はあるのでしょうか。
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簡易課税制度についても、特例があり!
コロナで簡易課税の適用・不適用の特例がある
課税事業者の選択同様、簡易課税の適用・不適用の特例もあります。
この特例の適用を受けることで、2020年中に簡易課税の適用・不適用の手続きを行うことで、原則⇔簡易の変更が可能。
でも実は、コロナの特例ではなく、既にあった特例
実はこの特例、コロナ関係で急遽特設されたものではなく、以前からある特例だったりします。
正式名称は「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請手続」
頭の文字の「災害等」の文字通り、自然災害などの未曾有の事態全般に対して適用がされます。
今回の新型コロナについては、この災害等に該当し、特例の対象になりました。
簡易課税の特例をどんな時に受けるの?
簡易課税から原則課税になる場合
簡易課税→原則課税になる大きな理由としてはやはり、消費税の還付金を受けることが可能になる点ですね。
簡易課税の場合、消費税の還付は基本的にありません。
未曾有の事態により、売上が減少し収入が減った・設備投資を行ったなどにより支出が増えた場合に、その分の消費税還付を受けることを目的として、原則課税に変更し、税負担を軽減することが目的の1つとなります。
原則課税から簡易課税になる場合
原則→簡易にする場合の目的の1つとしては、事務負担を軽減することですね。
とはいえ、還付を受けることが出来る場合に比べて、メリットが大きいかと言われると少し微妙なところではあります。
どちらかというと、やはり簡易→原則で還付を受けるのが主目的
やはりどちらかというと、簡易→原則へと変更し、消費税の還付を受けることで税負担を軽減することが主目的となります。
基本的には、簡易課税を適用している方が、その適用をやめて原則に戻る手続きという面が大きいですね。
災害等による消費税課税選択
概要
災害その他やむを得ない理由(新型コロナ含む)により被害を受けた場合に、その被害を受けた年に簡易課税の適用・不適用を変更したい場合には、手続きを行うことで、その手続きを行った年から変更することが可能です。
適用条件
災害等が生じたことにより被害を受け、変更が必要な事業者
手続
特例承認申請書を所轄税務署に提出
提出時期
災害等やむを得ない理由のやんだ日から2ヶ月以内
具体的な内容については定められていない
売上50%減等の明確な条件は定められていない
この特例については、災害等未曾有の事態全般に対して適用されるものですので、今回発生した新型コロナに対して、明確な条件は定められていません。
課税事業者選択のように、前年同期比概ね売上50%減などの条件がないので、自分が適用を受けることが出来るのか分かりにくい点もあるのかが難点です。
国税庁から公表されたパンフレット記載の内容例
国税庁から公表されている消費税に関するQ&Aで、災害等に該当する例として挙げられているのは以下の2点
- 通常の業務体制の維持が難しく、事務処理能力が低下したため簡易課税へ変更したい
- 感染拡大防止のために緊急な課税仕入れが生じたため、一般課税へ変更したい
2番の、緊急な課税仕入れの例としては、以下の通り
- 社員を分散させるために、別の事務所を緊急で借り上げた
- 感染予防のため、パーティションを設置するなどの増設工事を行った
- 消毒液やマスクなどの衛生用品を大量に購入した
困っていたら、相談に行こう
条件が明確に定められていないため、自分が該当するのか不安な方は多いと思います。
しかし、先程挙げた例で見ても、規模は不明ですが、パーティションの設置や衛生用品の大量購入などは、心当たりのある方も少なくないのではないでしょうか。
新型コロナの影響で支出が増えるなど、影響を受けて困っている場合には、遠慮せずに相談をすることをお勧めします。
困っている方の税負担が少しでも少なくなるよう、精進しましょう。
このページの執筆者
立川の個人・相続税特化の20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。