こんにちは。立川のネコ好き税理士、藤本です。
個人の確定申告では、発生した一定の損失については、その年に生じた他の所得に対して内部通算や損益通算を行える他、通算してもなお損失が出る場合には翌年以降の所得と通算出来る繰越控除の規定の適用があります。
それでは、繰越控除とは出のようなものなのでしょうか。
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
Contents
損失の繰越控除とは?
一定の損失について、控除しきれない部分については翌年以後に繰越することが可能
損失が生じた場合、所得内での内部通算や一定の損失については他の所得と損益通算することが可能です。
しかし、年によっては大赤字となりそれでもなお、控除しきれずに損失が残ってしまうこともあるでしょう。
その時には、その損失は全く考慮されないかと言えばそういうことではありません。
その場合、一定の損失については、その翌年以後に繰り越して、翌年以後に生じた所得の金額と通算することが可能です。
暦年課税を前提とする所得税においては、それは問題という話題も聞いたことがありますが、損失は尾を引くもの。翌年以後にも考慮をしてくれるのは嬉しいですね。
それでは、その適用を受けるにはどのようにすればよいのでしょうか。
適用を受けるためには、確定申告書に記載が必要となる
損失の繰越については、諸々の種類がありますが、基本的にはどれも確定申告書に損失を繰り越す旨の記載が必要となります。
損失が生じたからといって特に誰にも何も言わず記載せずに繰り越せる訳ではなく、しっかりと確定申告書を通じて周知する必要があるということですね。
しかし、記載がなくても所得はないところに変わりはない。それなら、繰越控除の適用を受けることが出来る?
所得税の建前としては、適正な税額負担を行うため、担税力を考慮し、超過累進税率等の措置がとられています。
所得がないところに課税はしない、ということでもありますね。
それでは、前述の繰越控除についてはどうでしょうか。
単に確定申告書に記載がなかっただけで、適用を受けていれば課税所得は出ない。それならば課税すべきではない?
今回はそれについて争った裁決事例を紹介します。
出典
出典:国税不服審判所ホームページ(令和3年3月5日裁決・争点番号202799000)
なお、裁決事例集には登載されておりません。
令和3年3月5日裁決・先物取引の損失の繰越控除について個別救済すべきか否かで争った裁決事例
請求人(納税者側)の主張
確かに、確定申告書に先物取引の損失の繰越控除等の記載はなかったが、損益通算をすれば所得はないのだから、所得のないところに課税すべきではない。
また、請求人は、約6年前に原処分庁(税務署側)から同じような事例で損益通算と損失の繰越を認めてもらったことがある。それにも関わらず、原処分庁はそれ以後について指導していない。それは原処分庁の過失である。
そのため、本件において生じた先物取引の繰越控除については、個別救済を行い、損益通算及び繰越控除の適用を受けるようにすべきである。
原処分庁(税務署側)の主張
請求人は、前年分の確定申告書において先物取引に係る雑所得等の金額を記載しておらず、先物取引の差金等決済に係る損失の金額に関する所定の明細書等の添付もなかった。
上記が適用要件となっていることから、租税特別措置法第41条の15《先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除》第1項に規定する繰越控除をすることはできない。
また、6年前に似たような事例で認めてもらったと主張するが、仮にその主張するような事実があったとしても、本件事例については何ら関係なく、結論を左右するものではない。
よって、損益通算及び繰越控除の適用を受けることは出来ない。
結論
棄却(損益通算及び繰越控除の適用を受けることは出来ない)
本裁決のポイント
実は以前、同じような事例で個別救済してもらっていた
今回の請求人の大きな主張としては、実は以前6年前に同じような事例で原処分庁から損益通算及び繰越控除の適用を認めてもらっていたということ。
そのような事実があるのに指導しなかったのは原処分庁側の過失だという主張がありました。
税務署がそういった!という中で話が大きくなった事例ですね。
本当に特例中の特例、その優しさを盾にしてはいけない
原処分庁側が仮に認めていたとしても、それは法令上で認められているものではなかったこと。本当に不注意だったり、どうしようもないことで原処分庁側の「優しさ・配慮」にての個別救済であったことが伺えます。
それにも関わらず、同じ過ちを繰り返しただけでなく、その配慮を盾にした事例ですね。
それを盾にしたところで法令上認められていないのだから通るはずもなく、今回は配慮する必要もなく棄却されています。
1度通ったことが2度通るとは限らない
前述のように、1度は配慮により請求人側にたいして宥恕していた事実が伺えます。
しかし、それが1度とおったからといって2度も通るとは限りません。
1度はどうしてもしょうがない面もあるのはやはり理解出来ます。
その1度は向こうの配慮や優しさとし、それに甘えないように注意しましょう。
まとめ
・1度とおったからといって2度とおるとは限らない
当事務所では、法人成りを検討している方や事業を始めたての方、これから規模を大きくしていきたい個人事業主、中小事業の方など幅広い視野を必要とする税務顧問を得意としております。
また、顧問契約や確定申告依頼までは必要ないけど、分からない部分だけ確認したい……という方のために単発でご相談出来るプランを用意しております。
お客様のご要望に併せてご提案させていただきますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
このページの執筆者
立川のネコ好き20代税理士 藤本悟史
※内容に関する法令等は、更新日による施行法令を基に行っております。